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危険な遊びのRenのレビュー・感想・評価

危険な遊び(1993年製作の映画)
3.5
『ホーム・アローン』シリーズの大成功により名実共にトップ子役となった麻小齢軽禁ことマコーレー・カルキンと、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのイライジャ・ウッドによる子役演技一騎討ちバトル。普通に問題作だった。一見の価値あり。

「トロッコ問題で、1人のほうを轢き殺すことを選んだような映画」

よくある「うちの子なんだか様子がおかしいわホラー」なので新規性は無いが、道徳の正しさを悉く外していく胸糞サスペンスが80分ちょっとで味わえるお得感みたいなものは味わえた。

『ホーム・アローン』の役どころとはガラッと変わって完全なるサイコパスのヘンリーを演じるカルキンだが、両者は根底で繋がっている気もした。彼の十八番演技の一つのキーワードは「小賢しさ」だと思う。『マイ・ガール』とかだとまたちょっと違うけど。

今作の肝はラスト6分。もはやここに全てが詰まっていると言っても過言ではない。引きで見たらある意味スッキリした(スッキリしてない)終わり方だけど、立ち止まって考えたら何一つ解決していない話にも見えてくる。
証拠の精査無しになんとなくの先入観で、あなたが被害者/あなたが加害者、と決めつける衆愚。炎上系YouTuberの告発を思考停止で真に受けて誹謗中傷を浴びせる衆愚。結果的な正誤は別にして、「一過性の感情でそんなことしたら取り返しつかないぞ」と言えるものが世の中にはごまんとあって、そういう恐ろしさを如実に表現してしまった映画だと受け取った。某人の選択はそれくらい重大なもの。エンドロール直前の独白からしても、やはりそこが最重要だったと思う。

ただ、だからと言ってそれ以外の選択肢があの人にあったかと言えばそれは多分無い。仮にこの世の中に「トロッコ問題・実践編。条件は以下とする」といった道徳の試験(外道にもほどがあるが)があるとすればそれはこの映画だろう。

マーク(イライジャ・ウッド)の家族乃至は味方は、物語序盤で綺麗に退場させられる。自分が映画で一番イライラすることは「訴えが誰にも聞かれず握りつぶされ孤立無援の戦いを余儀無くされること」なので、しっかりと胸糞であった。
最後まで、マークの心傷や家族への解決は一切為されない突き放し方は潔いのかもしれないけど自分は正直消化不良。脚本の逃げでもあるのでは。

子どもは無垢で純真の象徴のように描かれることも多いけど、時には大人以上に平気で残酷になるのもまた真理。虫を殺して遊んでる友だちは普通にいたし、自分もそうだったかもしれない。そういう残酷な好奇心だけになってしまったのがヘンリーだ。
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