一人の老セールスマンの生涯を通じて、親子の断絶、サラリーマンの悲哀などを、回想や虚実を交えながら描くアーサー・ミラー原作戯曲の映画化です。
62歳のセールスマン・ウィリー。
かつては敏腕セールスマンであったようであるが、
現在は年齢のせいもありかつての輝きは薄らいでいた。
彼の自慢は二人の息子だったが、二人の息子は定職にもつかないありさまで、彼の知らない間に深いわがたまりができていた。
ほどなくウィリーは若い社長から解雇を言い渡され、
住宅ローンや保険金の支払いにも困窮していた。
心優しい妻の勧めもあって、家族で関係修復を図ろうと、
全員でレストランで食事をしようということになるのだが、そこでウィリーは長男から衝撃の告白を受けることになる・・・
家族のためにその生涯のほとんどを、
セールスにかけた男の物語というにはあまりにも悲しい。
自分の息子には気づかぬうちに、大きな期待をしているものだが、子供はそれを言いようのない負担に感じていることはよくあることだろう。
子供はそれを愛情と感じることができずに、
反発したり、非行に走ったりするのである。
どんな環境になろうと、親の子供に対する愛情は変わらないのだが、親にも素直になれない変な意地がある。
でも家族は愛し合うもの。
ラストの葬儀のシーンにはそれが凝縮されている。
妻は墓の前で、
住宅ローンを完済したことを告げる。
活躍した現役時代を考えると、
あまりにも寂しい葬儀。
でも、主人なきあと、
家族の絆はより深まったことを感じさせる。
回想シーンが多く、技巧に走りすぎた感があり、
少しわかりにくい部分もありますが、
それでもテーマは今でも普遍なものだと思います。
ちょっとくたびれますが、
おススメであることには間違いなしです。