シズヲ

ロッキー3のシズヲのレビュー・感想・評価

ロッキー3(1982年製作の映画)
4.3
国民的大スター、ロッキー・バルボア!!スタローンの成り上がりっぷりは前作の時点でロッキーに投影されていたが、本作の振り切れ方は最早潔すぎる。『ロッキー2』は正直そんなに好きではないけど(大傑作である1作目とほぼ同じ方向性なだけに“劣化版”めいた印象が強かった)、本作は開き直ってエンタメ的展開に舵を切ってくれたおかげで普通に面白かった。マンネリの兆候やロッキーのスター化などへの批判も多かったらしいし、実際1作目の主旨からは大分外れているけど、個人的には好き。

開幕から流れる主題歌『Eye of the Tiger』の圧倒的昂揚感、ただただ最高。冒頭で“タレント化して日和っていくロッキー”と“かつてのロッキーのようなトラの眼を持つクラバー”が対比的に映し出され、映画の軸を分かりやすく作り出しているのが良い。有頂天のロッキー、迫り来る挑戦者、決定的な敗北、再起からの決戦……展開の抑揚が率直なだけに、結末へと向かって盛り上がっていくグルーヴ感がしっかりと活きている。挫折からの復活劇やライバルとの熱い友情など、全編に渡って漂う少年漫画的な熱量がなかなかどうして憎めない。ロッキーVSハルク・ホーガンといったお祭り的要素も何だかんだで好き。

スーツを着込んで豪邸暮らしをするロッキーは当然らしくないけど、まともに仕事して子供に絵本を読み聞かせられるようになった姿には何処かしんみりしてしまう。2だと教養や社会性の無さで本当に苦労してたもんなあ。かつての牙を失ったロッキーが喪失と挫折を乗り越えて復活していく流れは予定調和的でもアツいし、そこにかつての宿敵アポロが絡んでくるのもニクい。前作まではあまり掘り下げられなかったアポロだけど、本作では強敵(とも)と言うべき立ち位置で焦点を当てられている。浜辺で特訓の成果を喜び合ったりするような姿はもう仲良しそのもので微笑ましい。

ロッキーを真正面から奮い立たせるエイドリアンや重要な局面を迎えるミッキー、久々に1作目のような人柄を覗かせまくるポーリーなど、ロッキーを取り巻く脇役勢も相変わらず味わい深い。そして本作のライバルであるクラバー・ラングは見事なヒールっぷりを披露。とにかく煽る、煽りまくる。マイクパフォーマンスがめちゃめちゃキレてて楽しいし、そのギラついた風貌も“トラの目を失ったロッキー”に立ちはだかる壁として秀逸。それだけに終盤におけるリベンジマッチのカタルシスも強い(ロッキーも戦略的煽り芸を披露してくれる)。

そしてラストシーン、めっちゃ好き。ロッキー1、2ともに公式の試合で華々しい結末を迎えていただけに、二人だけの決戦で幕を下ろす本作は特に異彩を放っている。まあ結構さっくりなのでもう少し盛り上げられそうな気もしたけど、二人同時に拳を放つ瞬間で静止して『Eye of the Tiger』で締める演出はやっぱり堪らん。本作がシリーズ最終章の予定だったらしいのも納得の内容だけど、実際はまだまだ続くようだ。
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