Kuuta

狂った一頁のKuutaのレビュー・感想・評価

狂った一頁(1926年製作の映画)
4.0
黒沢清映画に出てくる戦前の呪いの映像のような…。精神病院をお化け屋敷扱いするのは今からするとアレな感じもするが、それだけに、タブーを犯している感覚が付き纏う映像体験だった。「古い割に」ではなく、普通に怖かった。夜中に見るんじゃなかった。

「狂った」人の世界の認知をこれでもかと表現する陰影の効いた撮影。アイデアが素晴らしい。横パンが高速回転に変わり、矢継ぎ早に日常を描きつつ、一瞬狂気に歪んだ顔が挟み込まれる。思わぬ方向からの手、ピンボケや多重露光、斜めのショット…。

割れた夫婦茶碗のモンタージュが示す、崩壊した精神と家族への執着。自分の暴力のせいで嫁に行けなくなった娘が、花嫁衣装のまま霊柩車に乗り込む悪夢。現代でもそのまま通用するような演出が沢山味わえる。

「超えてはいけない一線を超えた」男は、あの世から戻ってくる事が出来ない。黙々と床を拭き続けるラストは、まさに黒沢清作品のような後味の悪さだった。焼失したと思われていたフィルムが50年近く経った後に発見され再上映されたというエピソードも、この作品の雰囲気にマッチしている。81点。
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