ドント

狂った一頁のドントのレビュー・感想・評価

狂った一頁(1926年製作の映画)
3.9
1926年。スゴイ。スゴイぞ。大正時代、新感覚派の作家たちと衣笠貞之助監督が商売度外視で作り上げた奇妙キテレツ映画。子を事故で亡くし精神を病んだ妻を思い精神病院で働く男の見る患者たち、来訪する結婚を控えた娘、そして夢と幻視。というあらすじ。たぶん。
音楽もなし、字幕もなし、音声も台詞もなし(喋るけど口パク)の映像オンリーの作品ながら、それゆえ映像のパワーを感じる。台詞がわからなくてもどういうことなのかがだいたいわかるのだから、そのパワーの強さと確かさもわかろうと言うもの。
いわゆる前衛映画なのだけど、アートの名にあぐらをかくような妥協や粗雑さがない。トリック撮影は言うに及ばずバシッと決まった構図や深い陰影、役者たちの顔がいちいち素敵で、感覚的でありつつ計算されていて同時にヒビが入っているというはなれわざが成立している。この内容で壊れきっていないのがまたすごいのだ。パブリックドメイン万歳。
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