あまね

ボーン・アイデンティティーのあまねのネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

マルセイユ沖で漁船に助けられた男は、背中に銃創。皮膚の下に銀行口座のナンバーを埋め込み、一切の記憶を失っていた――

記憶を失った男(ジェイソン・ボーン)が自分が何者かを捜し求める中で、陰謀に巻き込まれて命を狙われていくというストーリー。

記憶がないため言動がどこか不安げでたどたどしいのに、いざ危機に直面すると流れるように体が動き、鮮やかに敵を倒し逃走する。
アクションは華麗でスピード感に溢れていて、不安げな普段の様子とのギャップがとても良かった。
カーチェイスあり、ガンアクションあり、心理戦あり……これでもかという程に鮮やかなアクションが展開する。
どれだけ多くの敵に追われていても、どれだけ強い敵に狙われていても、絶対に負けることはないだろうと安心して見ていられるほど、ボーンの強さは圧倒的だった。

ただ、あまりにも安心し過ぎたため、ハラハラドキドキすることはなかったかも。
これだけの男が背中を撃たれて記憶を失う程のミッションとはどんなものだったんだろう、いったいどんな陰謀に巻き込まれているのか……そちらの方が気になって、サスペンスのような気持ちで観ていた気がする。

彼の身体に染みついた強さ、タフさだが、中盤に出てきた『習性』という言葉がすごくしっくりきた。
訓練され、鍛え上げられた彼は、記憶を失ってもなお細胞の一つ一つに刻まれた記憶で敵と戦い続けるのだろう。なんて。

しかし、物語が終盤を迎え、ボーンが記憶を失ったミッションを思い出したところで――一気にテンションが下がった。
ネタバレ中のネタバレになるので詳細は控えるが、情が絡んだ失敗とは……。
いや、ネタ自体はありだと思う。ただ《この話》では違和感しか感じなかったのだ。
これだけ完璧に仕上げられ、兵器となった男は、記憶を失って初めて感情の揺らぎを感じるくらいだろう――そう私が思い込んでいたせいかもしれない。
何の瑕疵もない全盛期の作戦遂行中に、情が原因で仕損じるという展開が受け入れられずに一気に醒めた。
個人的には、記憶を失う前はもっと冷徹だったら良かったのになぁ。

その後のストーリーは消化試合みたいな気分になってしまい、少し捻った展開になったものの、どこか遠い目で見てしまった。

アクションは切れ味抜群、キャラクターも魅力的。
ただ、画とそこから感じた主人公のイメージが、シナリオで描かれていた主人公と少しずれていたため、私自身はいまひとつ乗り切れなかった。
あまね

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