滝和也

ワイルドバンチ/オリジナル・ディレクターズ・カットの滝和也のレビュー・感想・評価

4.3
行き場を失くした男達
へのレクイエム

凄絶なるバイオレンス
描写と共に無法者達の
時代の終止符を告げた
ペキンパーの傑作西部劇
にしてニューシネマの傑作!

「ワイルドバンチ」

最後の西部劇と呼ばれ、西部劇自体にも時代の終止符を打ちし金字塔。

米墨国境の街で鉄道会社を襲う軍服姿の強盗団。そこには罠が仕掛けられていた。鉄道会社が手配した元囚人で構成される警備がそれを迎え撃つ。市民を巻き込み展開された壮絶な銃撃戦の後、パイク(ウィリアム・ホールデン)率いる強盗達は内乱が続くメキシコへと逃げ込む。老成し、疲れ切った彼らは最後の仕事として、メキシコ政府軍からの依頼で米軍が運ぶ武器を強奪せんとする…。

オープニングからサム・ペキンパーの凄絶なバイオレンス描写でスタートするこの作品。キリスト教の葬列にも似たパレードの最中、銃撃戦が開始され市民を巻き込み撃ち合う無法者たち。早いカット割によりスピード感と臨場感を高め、そこにカットインされるのは子供達が笑いながら、軍隊アリにサソリが襲われる所を眺めているシーン。このシーンが実はこの作品の流れを示していて恐ろしくも美しいシーンとなっています…(・・;)

西部開拓の終わりと共に行き場を失くした無法者たちが追い詰められ、メキシコに流れますがそこは内戦と言う更に狂気をはらむ世界という皮肉。彼らを追う者もかつての仲間である無法者達という皮肉。ペキンパーは徹底して非情な視線かつ徹頭徹尾リアルな暴力描写を持って、世界を構築して行きます。

中盤では軍事列車を強奪するスペクタクルが用意され、彼らを追う無法者たちとの追撃戦が描かれます。国境の橋で橋桁が割れ、車輪が挟まり進めなくなる馬車、追う無法者、橋を爆破する導火線に火が付き、危機一髪となる見事なサスペンス。素早いカット割と編集、大胆な構図からのリアルな橋爆破シーンの凄まじいまでの迫力。ペキンパーの映画作家としての手腕を見せてくれます。

そして狂気と暴力が吹き荒れるラストへ。仲間を失った怒り、そして何処にも行き場が無いことを悟った彼らが挑むのは数百人を超える軍隊。たった4人が挑む、そのバイオレンスシーンは血のダンスとも呼ばれた壮絶なる銃撃戦として映画史に名を刻みました。正に西部に生きる無法者、そして西部劇の最後を飾るに相応しい花火であり、徒花となっています。凄まじい数の弾着による迫力と素早いカット割による迫力が並ではありません。この暴力シーンによりペキンパーは名匠としての地位を築いたと言っても良いかもしれません。

老成して、はみ出してしまった男達の渋さと行き場のない悲しみを演ずるのは、名優ウィリアム・ホールデン。その相棒となるのはエアウルフでお馴染みのアーネスト・ボーグナイン。ここにウォーレン・オーツ、ベン・ジョンソン、エドモンド・オブライエンを加えた渋みのある面子。ときに明るく、笑うしかない悲しみの行路を演じます。追手である元仲間のロバート・ライアンの苦渋の表情も激渋ですね。

途中、自動車が出てくるシーンや馬が追いつけない程のスピードの機関車が登場し、彼らの時代が終わりを告げる象徴となり、ラストアクションでは演出上、凄まじい効果を上げる機関銃(ガトリングガンタイプ)もその1つでしょう。

寄る辺なきもの、時代に取り残されたものたちの悲哀に満ちた最後を描くのは、正にニューシネマであり、そのラストの寂寥感たるや凄まじいものがあります。追手であるロバート・ライアンのラストに一抹の光を残したのは更に残酷な運命が彼には待っていると言う暗示か、それとも西部劇はまだ続くと言う願望なのか、それはわかりません。

男たちの挽歌として、嘗て無いバイオレンス西部劇として、そして時代を彩ったニューシネマの傑作として是非こちらはご覧いただければ!オススメです(^^)
滝和也

滝和也