イペー

少女ムシェットのイペーのレビュー・感想・評価

少女ムシェット(1967年製作の映画)
3.8
私は罪を背負いたガール!

どこにも居場所のない少女の身に降りかかる不幸を、ロベール・ブレッソン監督が冷徹な眼差しで描いたドラマ。

初めてのブレッソンです。
色々と厳しい"俺イズム"を作品に求めた監督だそうで。芸術性の高さと、内容の暗さに、ビビりながらの鑑賞でした。

慎重に抑えられた感情表現。抑揚のないセリフ回し。手足の動き、など動作のクローズアップ。
サウンドデザインを含め、シンボリックな描写はありますが、淡々と出来事を記述する様な、とても静かな作品です。

ムシェットは14歳の少女。貧しい家庭に育ち、クラスメイトや教師にも疎まれ、いつもひとりぼっち。不幸のどん底状態です。
さらには密猟者に陵辱されたり、お母さん死んだり、散々な目に遭います。

最初から神様に嫌われた様な境遇のムシェットちゃん。理不尽な罰を受けてる、と思っていたのではないかな、と。
その罰に対して、罪の裏付けが欲しかったんじゃないかな、と。

彼女なりに、調和が取れた状態を求めていたのかもしれません。

森に迷い込んだムシェットは、密猟者の罪の告白を聞きます。
彼を受け入れる事で、罪をその身に共有したかったのではないか。
彼女は貞操を奪われるのですが、ある種の通過儀礼として、大人の女性になることを決意している様にも見えるのです。

町に戻り、母の死を目の当たりにするムシェット。赤ん坊をあやしながら流す涙は、罪を背負わない(背負えない)存在だった無垢な自分との、決別の涙なのかもしれない。

町の人間は母を失った少女に優しく接します。
しかしムシェットは周囲の同情を撥ね付けてしまう。覚悟の上で背負った罪に対して、安易な赦しを拒みます。
彼女が町の人間に向ける敵意。視線が雄弁に物語っています。

そんなムシェットを嘲笑う様に訪れる、あっけなくも残酷な事実。
教会の鐘が鳴り響く中、少女が罪も罰も巻き込んで、ひっそりと消えてしまうラストは、あまりにも儚い…。

ブレッソン監督の冷ややかな視線は何を見つめているのでしょうか?
対象を突き放す様な演出ですが、おそらく監督自身は人間そのものに対して、尽きせぬ興味を持っている…そんな印象を受けました。

…マジメに物事を考えるのは一日に10分が限界。頭を使い過ぎて、知恵熱が出そうです…。次はもっとほのぼのとした映画を観よう!