さいとぅおんぶりー

少女ムシェットのさいとぅおんぶりーのレビュー・感想・評価

少女ムシェット(1967年製作の映画)
5.0
酒浸りの父と病で床に伏せる母そして幼い弟の面倒をみる少女ムシェット、学校にも家にも居場所がない少女に降りかかる不条理の数々、強姦されあげくに母に先立たれ最後は入水して自らの命を断つまでの少女の受難を厳格に映し取った傑作。

セリフはおろか心情の吐露も殆どなく只々奪われ続け自尊心を踏み躙られ俯くだけの少女の虚な目は否が応でも此方の情動に訴えかけてきた。
少女が自らの意思で選び取る事が出来た唯一のものは入水による自己救済、飛び込んだ先に初めから少女の存在などなかったかの様な穏やかな湖面が映し出されて終わる演出は余りにも救いがない。

原因と結果を不明瞭にすることで感情に寄りかかった善悪の判断を拒絶し観客に対して客観性を保持しようとするブレッソン作品の中でも結末に至るまでの蓋然性がはっきりしてるので1番観やすかった。