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非常線の女のkyonのレビュー・感想・評価

非常線の女(1933年製作の映画)
4.5
いや…小津作品だと『宗方姉妹』、『東京暮色』とかが好きだったんだけど、小津の初期サイレント作品の方が好きかも!!

『非常線の女』の田中絹代がたまらない…!

写真でも絵でもなく、映画で映される家庭的な女性像と性的消費を示唆する女性たちのせめぎ合いの魅力はなんなのだろう。

田中絹代の時子はモダンガールとして、会社でタイプライターとして働いているけど、その一方では街のゴロツキの1人、襄二のパートナーとしての顔も持つ。

余裕たっぷりの最初の姿から、自分とは反対の家庭的な女性の登場により、「まともな生活」を考えるようになる。

そんな彼女に襄二は「らしくねえ」なんて言っちゃう。

らしくない、っていうこの良妻賢母な女性像とモダンガールのギャップの示唆。

だから最後に強盗しちゃって、2人で逃げるんだけど、結局自ら捕まるラストはぐっとくる…

それを音のない画面でたくさんのマテリアルを通して成立させちゃうんだから、小津の凄さってサイレントでひしひしわかるんじゃないか。
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