まぬままおま

木と市長と文化会館/または七つの偶然のまぬままおまのレビュー・感想・評価

4.1
エリック・ロメール監督作品。
条件従属節の授業とその「もし」から物語が始まるのが知的でお洒落。
やっぱりエリック・ロメール監督作品はよいですね。

珍しく(?)政治性に富んだ非恋愛物語。
タイトルはどういった意味かと思ったが、まさくし木と市長と文化会館の話。田舎にそこの市長が、文化会館を建造しようとしてる話。
またその物語が、当時のフランスの政治情勢(右翼と左翼と環境派=緑の党)を下敷きにしながら、「偶然」の出来事で進行する。

「画一化された人間こそ僕が嫌うものだ」
と市長は言う。
また市長の恋人のベレニスは、田舎に生きることを反動的だと否定的に評価する。

右翼/左翼に関わらず、自らの党派性に固執して、画一化されていてはだめなのである。そして田舎を美化することも、都市化して自然を忘却してもいけない。

自然の美しさを享受しながら、自ら考え、政治をすること。そして画一化から逃れ、偶然性を愛すること。
もし「あなた」がこの映画を観たならば、。
エリック・ロメール監督が提示している。

蛇足1
田舎の自然の美しさが提示されている。またジャーナリストから取材される人には、実際に田舎で生きている人も含まれている。この二つの要素は、『モンフォーコンの農婦』から引き出されているのでは?

蛇足2
「自ら考え、政治をすること」は教師の娘ゾエを見よ。
偶然にも文化会館の建造は中止になる。しかし最後のシーンでは、その建設予定地で地元の人が集っているのである。この様から「偶然性を愛すること」を見よ。

蛇足3
市長の恋人は小説家のベレニスである。
この名前は、最初の短編作品『ベレニス』からきているのかな。