ウシュアイア

ルイーサのウシュアイアのレビュー・感想・評価

ルイーサ(2008年製作の映画)
3.7
<南米映画特集③>
(2011年1月24日@シネマート新宿)
[あらすじ]
事故で家族を亡くし、愛猫のティノと暮らす中年女性・ルイーサは墓地の管理人と有名女優の家政婦の二つの仕事で生計を立てていた。

ある朝、最愛のティノを亡くし、その日に自分が勤める二つの職場で解雇を言い渡される。墓地管理会社から支払われるはずの退職金がもらえず、ティノの火葬もままならず、生活費も尽きてしまい、ついには電気も止められてしまう。

窮地に追いやられたルイーサは地下鉄で出会った物乞いをマネて、自ら物乞いを始める。

[感想]
Yahoo!映画の解説では、コメディとなっているが、コメディにしては話が重すぎるし、ちょっとブラックである。そして、アルゼンチンの映画ということで、ラテン系のノリを期待していたが、ルイーサには全く見出すことはできない。

予想、期待を見事に裏切られた。

ストーリー的にはどこにでもあるような不器用な人を描いたヒューマンドラマ。しかし、舞台がアルゼンチンのブエノスアイレスということで、ブエノスアイレスという町が持つヨーロッパや北米、アジアとも違う混沌とした雰囲気が、今まで見たことのない味わいを作り上げていた。

さて、この映画に出てくるルイーサという女性、家族を事故で亡くしたということもあってか、ステレオタイプのラテン女とは真逆の生真面目で心配性の上に偏屈である。一人暮らしが長くなってしまったせいなのか、特に趣味らしい趣味もなく、きちっとした髪型でスーツを着て、毎日決まった時間に同じバスで職場に向かう日々の繰り返しということで、本当に融通が利かない。

墓地の仕事がクビになったとき、銀行からの通知に対応すべく銀行へはじめて行くのだが、地下鉄の乗り方を知らない上に、通知の差出人が頭取になっているからと言って、窓口で頭取を呼び出す始末。ここまで来ると、さすがにコメディとは思い難い。

さらに、極めつけは、前の勤め先に怖気づいて退職金の請求もできない上に、新しい仕事の探し方も分からず、地下鉄で出会った物乞いのマネをはじめて生活費を得ようとするが、そこで片足の物乞いに説教される始末。

さらに、猫の死骸が火葬できず、自宅の冷凍庫に仕舞うが、電気を止められた後は、高級肉と偽って管理人さんの家の冷凍庫に預けてしまう。ラテン系の陽気だけどちょっと物憂げなストリートミュージックと相まって繰り広げられるルイーサの奇行はまさにブラックユーモアそのもの。

ラストは、孤独に思えたルイーサも、気にかけてくれる隣人や説教してくれる物乞いの存在から、孤独感を克服し、何とかティノを火葬して、勇気を出して前の職場に退職金を請求する、

というところで終わるのだが、ルイーサのこの先に明るい展望が示されたわけではなかったので、なんだかすっきりしない終わり方だった。

観れば何か得るものはあるはず。
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