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真人間の一人旅のレビュー・感想・評価

真人間(1938年製作の映画)
5.0
フリッツ・ラング監督作。

オーストリア出身の巨匠フリッツ・ラングがアメリカ亡命後の1938年に撮り上げた人間ドラマの隠れた名篇で、アメリカの名脚本家ノーマン・クラスナーの原案を基にしています。

前科者の更生を支援する人格者の社長が経営するNYのデパートで販売員として働いている前科者のジョー(ジョージ・ラフト)は、同僚の女性ヘレン(シルヴィア・シドニー)と心惹かれ合いめでたく結婚するが、やがて彼女自身も前科者であることを知って怒りに震えたジョーは、嘗ての犯罪仲間と共にデパートへの窃盗計画に加担することを決意する…という人間ドラマで、妻の秘密の露呈によって亀裂が生じた夫婦の愛のゆくえをヒューマニズム溢れる人間描写で映し出しています。

硬派なサスペンス&スリラー映画を十八番とするフリッツ・ラングが更生途中の前科者夫婦をライトに描いた風刺喜劇の名篇で、妻への失望から悪の道に再び足を踏み入れそうになる夫と彼を救い出したい健気な妻の心理の相克を描いて、夫婦間の嘘偽りのない愛情の尊さ、素晴らしさを優しく謳い上げていますし、夫を含めた前科者たちに対する意表を突いた妻の説得法が最高にユニークな味わいの“犯罪者更生+夫婦再生ドラマ”となっています。
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