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110番街交差点のmasayaanのレビュー・感想・評価

110番街交差点(1972年製作の映画)
4.2
【続々】タランティーノの『ジャッキー・ブラウン』があまりにも面白かったので、70年代のブラックスプロイテーション映画を見てみるプロジェクト、その7。ついに、ついに見ました『110番街交差点』。そう、『ジャッキー・ブラウン』で流れるボビー・ウーマックのヒット曲「Across 110th Street」のネタ元です(正確にはちょっとヴァージョンが違うのですが)。

いやー、しかしなんていうか、素朴に「タランティーノ的なもの」を求めてみると火傷する感じの作品だと思います。簡単に言うと、(原作の小説があるとはいえ)脚本がちゃんと練ってあって、差別問題がそこかしこに顕在化していて、藤原帰一先生がブラックスプロイテーションを指して仰るような、「主人公を白人から黒人に取り替えただけのB級活劇」の枠を打ち破って、スパイク・リーの登場を待っているような意識の高い(その代わり、ラディカルな魅力にはいささか乏しい)作品だと思います。NもFも使いまくりなのはすごいけど。

3人のアフリカ系がマフィアのカネを強盗することで始まる物語なのですが、それを追う「プロ組織」の内部でも、「警察」の内部でも、イタリア系がアフリカ系を平気で差別するような文化が横行しており、特に警察側はイタリア系のベテラン警部(=ザンパノ!?)が組織側とズブズブの汚職警官、おまけに筋金入りのレイシストで、その部下である大卒2年目の警部補が、むしろ正義の心に熱く燃えるアフリカ系なのですね。このねじれは面白いです。

で、もちろん、脚本と迫力あるカメラ・ワークに唸りながら、深作の『県警対組織暴力』なんかの元ネタとして見ても面白いのですが、「凶悪な強盗殺人犯を熱血的なアフリカ系の警部補が法治主義的に追う」というストーリーだったり、「犯人たちにもスラムの過酷な現実があったのだ」という描写に見られる社会派の側面を隠れ蓑に、あくまで自然な流れとして、白人のレイシストどもを黒人の手でしっかり・ちゃっかりと殺しているのがミソなのだろうなと。

ポップ・カルチャー・サイト『COMPLEX』が選ぶ、「史上最も素晴らしいブラックスプロイテーション映画ベスト50」、第6位の作品。

http://www.complex.com/pop-culture/2013/07/best-blaxploitation-movies/across-110th-street
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