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幻の光のTaulのレビュー・感想・評価

幻の光(1995年製作の映画)
4.0
『幻の光』

昨夜は第七藝術劇場で大好きな是枝裕和監督のデビュー作を鑑賞。監督のリモートトーク付。以前DVDで見てこれは劇場でじっくり味わうべきだと思っていた夢が叶う。死の陰にとらわれた女性をまさに陰影の強いシーンやロングショット中心で静謐に幻想的に描く。その抑制美、映像美に陶酔した。

是枝監督といえば脚本力やドキュメンタリー的な印象もあるがデビューはこういう画が中心のシネフィル的な作品だった。小津、成瀬、ベルイマン、アンゲロプロス、タルコフスキー、そして侯孝賢。そんな影響が錯覚かも知れないが分かり、自分の映画の美意識と共鳴するような興奮さえあった。

33歳と思えぬ風格と老練さ。絵コンテを重視し過ぎたという思いもあるようだがキネ旬4位、ヴェネツィアで賞を獲るなど評価は高い。デビューで本意な作風でないのにこの完成度という。映像が美しい作品でBlu-ray上映だったので黒が映えるフィルムでいつか見られたら、なんて夢が広がった。

上映後は是枝監督によるトークが。機材トラブルで遅れるも質疑応答ではいつもどおり丁寧で的確な回答が嬉しい。私も手を挙げてみてある謎が解けたりした。侯孝賢とのエピソードがじかに聴けて両ファンの僕には至福。最後に映画ファンへの温かいメッセージが。ありがとう是枝監督、ありがとうナナゲイ。
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