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幻の光のkoheiのレビュー・感想・評価

幻の光(1995年製作の映画)
4.4
どうしてこんなに優しいんだ。

ほんとに。この監督の映画を観てると優しくなれる気がするんです。どんなに理不尽なことが起きても。どんなに悲しいことがあっても。

すごく優しくて温かい映画なんだ。


是枝監督の長編初映画。20代後半で映画を撮る、と目標を定めながらテレビ番組のディレクターとして主にドキュメンタリー番組を制作していた是枝監督が初めて撮った映画。その際に方々から「いまこんな映画を撮っても絶対赤字になるからやめとけ。2本目が撮れなくなるぞ」と助言されたというのは面白い逸話で、確かに、1作目に撮るような“置きにいってる感”は全くないし、娯楽性にも欠けてるし、めっちゃ静かだし。要するに一作目から是枝作品に通底する“色”が確立されているわけです。そこがもう、是枝フリークとしては堪らないわけですが。

「あっちの世界」に行ってしまう人と行かない人の違いはどこにあるのか、という問い。次々作の『ディスタンス』でも同じようなテーマが見受けられたけど、「死」というものの見つめ方と、自分とは明らかに異なりしかし離れることを諦めない、是枝監督による人間の本質を探る旅は非常に興味深く、そしてほんとうに優しく、陽光のような温かさがある。

「あちら」に光を見てしまう人と、「こちら」に光を見出す人。そこに違いはほとんどないのかもしれないということ。それでも「こちら」に居続けるということ。

映像的な「温かさ」がすごく自然に伝わってきて、そこに僕は「光」をみました。おもしろかった。
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