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ラルジャンのsonozyのレビュー・感想・評価

ラルジャン(1983年製作の映画)
4.0
1983年、ロベール・ブレッソン監督の遺作。第36回カンヌ国際映画祭 監督賞受賞。
『ラルジャン』L’argent = お金。原作はトルストイの小説『にせ利札』だそう。

1枚の「ニセ札」から始まる転落と悲劇の連鎖。

小遣いが足りないお坊ちゃま風の高校生ノルベールは、友人からの借金が今月返せないと相談に行くが、その悪友はニセの500フラン札1枚を出しこれを使ってお金を作ればいいと持ちかける。
二人は小さな写真店を訪れ、写真立てをそのニセ札で買い、女主人にやや怪しまれるものの釣り銭を手に入れる。

閉店後、ニセ札に気付いた写真店の夫婦は、早く処分しようと、たまたま給油の請求に来た燃料店の青年イヴォンへの支払いに使ってしまう。
仕事を終えたイヴォンはニセ札とは知らず立ち寄ったレストランで支払おうとしたところ、ニセ札犯として警察に突き出されてしまう。

イヴォンヌは写真店で払われたお金だと訴え、警察同伴で写真店を訪ねるが、店主に指示された写真技師の青年ルシアンは、イヴォンの顔も知らないとしらを切る。
潔白を証明できないイヴォンヌは、幼い娘と妻エリーズがいながら、投獄されてしまう・・・

ブレッソン監督らしいアップショットの妙。セリフが少なく、過剰な感情表現もない登場人物たちの心の闇が引き起こす行いの連鎖で、転落と悲劇が静かに進行していきます。

冤罪から逃げられないどころか、何故ここまで・・・という転落の人生になってしまうイヴォン。最後まで救いはありません。

改めて、人生は何が起こるか分からない。という事実を突きつけられるような、静かなる重さに痺れました。
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