ほーりー

ラルジャンのほーりーのレビュー・感想・評価

ラルジャン(1983年製作の映画)
3.5
明るい映画が続いたので、今回はガラッと趣向を変えてロベール・ブレッソンの恐ろしいクライム映画「ラルジャン」を。

一枚の偽札を作った高校生たち。早速お金を騙し盗ろうと写真屋に向かい、これがまんまと成功する。

偽札を掴まされた店主夫婦は頭にきながら、腹いせに今度は灯油を売りに来たガソリンスタンド店員にその紙幣を掴ませる。

何にも知らないその店員はレストランで支払いをしようとしたところ、偽札を使用した現行犯で逮捕される……。

最初は小さな悪事だったのが、やがて雪だるま式に大きくなって、最後は恐ろしい猟奇殺人へ発展するまでを描いた「ラルジャン(金銭の意)」。

これは怖いというよりか無機質な不気味さの方が強い作品だった。

先に正直言うと、個人的にはロベール・ブレッソンは苦手である。

音楽をほとんど使用せず、役者は素人を使い演技もさせない、徹底して感情の高ぶりを抑制した厳格なブレッソンの演出に、どこに面白さを感じればいいのか最初悩んでしまった。

あの小津安二郎やヴィットリオ・デ・シーカですらまだメリハリが感じられるのに、この淡々としすぎた演出は一体何だろうと頭から疑問が離れなかった。

ところがある方のレビューで、"他の映画を豪華な料理に例えたら、ブレッソンの作品は血管に直接注射するようなものである"と書いたのを目にして、なるほどと合点がいきましたネ。

確かに点滴や胃ろうにメリハリがあったらそれはエライことである。

ラスト、犯人は警察に連行されて誰もいないお店の中を野次馬たちがずっと除き混んでるシーン。

これを黒沢清監督は「希望」と解釈したそうだが、凡人の私はこれを見た目通り「空虚」としか解釈できなかった。

で色々調べたらブレッソン自身はインタビュー等で「彼らは空虚を見つめている」と語っていたそうな😅

結局、悪の本質は誰にもわからないということなのだろうか。

■映画 DATA==========================
監督:ロベール・ブレッソン
脚本:ロベール・ブレッソン
製作:ジャン=マルク・アンショ/ダニエル・トスカン・デュ・プランティエ
撮影:パスクァリーノ・デ・サンティス/エマニュエル・マシュエル
公開:1983年5月18日(仏)/1986年11月29日(日)