松瀬研祐

ラルジャンの松瀬研祐のレビュー・感想・評価

ラルジャン(1983年製作の映画)
4.3
不条理な、あまりにも不条理なお金にまつわる物語が、淡々と進む。あまりにも淡々と進んでサラっと通り過ぎそうになるけれど、劇中で起きる出来事は、偽札による売買、強盗、無差別殺人、睡眠薬による自殺、犯罪の隠蔽、虚偽、子供の死、離別、など、言葉にするととてつもなく重い。それらが一つのお金にまつわる出来事をきっかけで転がるように起きる。この救いの無さはなんなのだろうか。物語の最後、刑務所を出て、殺人を犯してしまった登場人物を受け入れて匿った老婦人と、その人物が、共に洗濯物を干す場面のささやかな幸福を感じられるが、その次のシーンでそのささやかな幸福は、本人の手により葬られる。

時折、何かを行う手元のクローズアップが挿入される。あらゆる出来事は人が、その手で行う。それは何も悪いことばかりではなく、仕事をする手元や、ピアノを弾く手元も映す。感情の揺れについて心情を描くわけではなく、徹底的に行為そのものを描写する。すべて人が起こすこと。突きつけられる。
松瀬研祐

松瀬研祐