Mikiyoshi1986

戦場のメリークリスマスのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)
3.9
デヴィッドボウイが美しい。
端正な顔立ちと魅惑的なオッドアイ。
蘇州夜曲を聴きながら、マレーネ・ディートリッヒの夢を見るハラ軍曹。
坂本龍一のサントラ曲の言いようもない素晴らしさ。

まず本作はロレンスの戦争体験記に基づいた実話であること。
敵同士である日本兵と外国人捕虜との価値観や習慣の差異がぶつかり合いながらも、確かにそこには異文化の交流があり、
国籍や敵対を越えた友情や愛、慈悲や情が存在し得たという事実。

相対する死生観や宗教観による罪の感覚も興味深く描かれます。
セリアズが弟に抱く罪の意識が西洋の「罪の文化」を、切腹そしてヨノイがセリアズに抱く思慕の念が日本の「恥の文化」をそれぞれ象徴的に映し出した演出は秀逸です。

ハラとロレンスの粗暴な友情はジャイアンとのび太のよう。
ヨノイがセリアズに隠せぬほどの羨望と好意を持った不思議な相関は、従卒ヤジマ一等兵がヨノイに懐く情念にも通じています。
そしてもうひとつ忘れてはならないのが、カネモトとオランダ人捕虜デヨンとの事件。
デヨンが最後にとった行動から、二人の真の関係性が窺えました。
その瞬間デヨンは首から下げた十字架を外します。
ここでもキリスト教において自殺は大罪であるのに対し、武士道において自決は崇高な行為であるという相対が見て取れました。

また衆道は武士の主従関係を構築する上で高潔な契りとされ、直接的ではなくともその微妙なエッセンスは節々に挿入されています。
このサブテーマは後の「御法度」にも色濃く引き継がれることに。

大島渚は俘虜収容所という極限的な舞台を背景に、男社会のヒューマニズムの本質を見事に炙り出しています。

そして最後に。
デヴィッドボウイが10日亡くなったという訃報が昨夜飛び込んできました。
彼の69歳の誕生日である1月8日には新譜Blackstarも発売されたばかりで、私もつい先日10分に及ぶそのシングルカット曲のMVを観て、ボウイもまだまだ元気だなぁ!と安心した矢先の出来事でした。
音楽界のみならず世界のポップカルチャーに多大な影響と衝撃を与え、そして颯爽と駆け抜けていったロックスター・デヴィッドボウイに心から哀悼の意を表します。
どうか安らかに。