せーじ

戦場のメリークリスマスのせーじのレビュー・感想・評価

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)
4.3
この作品も、名前は知っていたけれども観たことが無かった作品。
一言でいうと、とても繊細で難解な作品でした。

まずはやはり、ビートたけし、坂本龍一、デイビッド・ボウイら三人の存在感が凄まじいことに驚いてしまう。
特にデイビッド・ボウイの美しさたるや。
あの"なにかある"と思わせる佇まいと透き通る目を見てしまったら、誰だってあの男に惹かれてしまうのではないだろうかという、説得力を超えた何かが乗り移っているような気がした。

一方、物語は一見単純だがとても難解で、「出会い」と「衝突」、「しがらみ」と「解放」、そして「別れ」と「生死」が、様々な局面で重層的に描かれているように感じた。登場人物の誰もが命懸けで必死であるし、そういう人間同士の精神的なぶつかり合いを描いた作品なのだとも思った。
ゆえに、ロレンスとハラの"友情"も、ヨノイのセリアズに対する"恋慕"も、ああいう緊張感のある限定された環境だからこそ、ほころびの様に生まれ、形づくられたのかもしれない。そのことに目を向けて彼らを想った時に、彼らそれぞれの人間性が、一気に形を帯びて迫ってくるように感じた。

ただ、そうだとすると、セリアズの回想が他の場面と比べて浮き上がってしまっていたのが残念だったなと思ってしまう。
もう少し断片的な回想でもよかったのではないだろうか…と思ったものの、これしか方法がなかったのかもしれないとも思うし。
難しいですね。

戦争映画であり反戦映画には違いないですけれども、そういうものを超えた人と人との出会いや関わりを繊細に描いた作品だと思います。
観ていない方は是非。
せーじ

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