教授

戦場のメリークリスマスの教授のレビュー・感想・評価

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)
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クリント・イーストウッドの「J・エドガー」と同じく。自分の中の無意識にあるめんどくさい性癖、願望や理想とかけ離れた自分自身の尊厳を抑圧してしまうこれまためんどくさい思想とか国家とか。

西洋人にはまったく理解のできない独特の美意識に肩肘張りまくり、思い詰めていても、それは虚勢であったり、背伸びであったり、なんだか実態の伴わない精神論でしかない。

ほぼ、全編にわたり、坂本龍一とデヴィッド・ボウイ、ビートたけしとトム・コンティの2組のカップルの片想いを描いているとも言える。

坂本龍一は、圧倒的な肉体と容姿をひけらかすデヴィッド・ボウイにメロメロで、だからこそ恐れる。
恐れる度になんだかわからない内に籠もっためんどくささを発揮し、たけしは何かと日本の美徳とか軍人らしさをトム・コンティにアピールしまくる。

だが、力でねじ伏せるしか術はなく。
ボウイにキスされちゃうと精神崩壊する教授や、戦争に負けた途端に卑屈になるたけしだったりと、日本人あるあるのオンパレード。

そもそもが冒頭の裁判シーンにあるようにこの、裁判制度を持ち込んだイギリス人に対して付け焼き刃の近代化を示したところで、原理原則は踏みにじられて「形だけの」裁判を行う時点で日本人の危うさが示されている。

西洋人への感覚、同じアジアの人間への感覚。
そして何より自分たち日本人とは何なのか?
という根源的なテーマに恋愛、戦場、を絡めた男たちのメロメロな人間ドラマとして最高でした。
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