垂直落下式サミング

ディスタービアの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ディスタービア(2007年製作の映画)
3.4
『裏窓』をティーン向け青春ドラマ風味にしましたという感じの映画。誰かの生活を覗き見たいという願望は、あまり品が良くないことだが誰にでもあるものだ。
裏を返せば、好奇心で隣家を覗いていた男が殺人現場を見てしまうといった発想事態はありきたりで平凡な話だとも言える。だから、設定が似ているからといって、いちいち引き合いに出してどうのこうの言う程のことではない。このやりつくされたシチュエーションをどう転がし、どう面白く見せていくのかが肝心だ。その意味で、本作は充分にオリジナリティのある作品だと思う。
隣家の殺人犯を演じる役者が上手くて、ぞっとする気味の悪さが印象的。いい存在感を放っていた。
とはいえ、事件が明るみになる後半は、サスペンスやらラブコメやらホラーやらアクションやらが次々と展開するゴッタ煮状態で、どの話もあまり上手な回収をしてくれない。冒頭の交通事故のシーンの方が殺人鬼をめぐる本筋の話より迫力があるのだが、残念なことにそのエピソードは後の事件の展開に直接絡んでこない。せめて父の死を乗り越えることで、主人公のメンタル的な成長を間接的に描くとかあってもよそうなのだが…。
序盤で描かれるショッキングな交通事故シーンは、当然その展開のために用意されたギミックだと思っていたので、何のフォローも回収もされないのは不満が残る。
方向性の定まっていない散漫な作劇とするか、複数のジャンル映画の旨味を一本の映画で味わえる贅沢品とするかは難しいところだ。
麻雀風に例えるならホラー、サスペンス、ミステリー、家族愛、ラブコメが中途半端に両面待ちしているむず痒い状況がずっと続くのに、アクションにスプラッタまで揃えようと手を広げちゃうのでもう大変。でも、最後には小さい役ではあるものの上手いことツモってくれた感じはするので、それほど悪い映画じゃなかった気はする。
同監督作『イーグルアイ』でも『北北西に進路を取れ』を臆面なく模倣している場面があったが、本作も元ネタに対する衒いのないインスパイア・オマージュ・パロディの数々が印象的。と言うか、有名な映画のストーリーを丸まんまになぞっておいてパクリと言われない方がおかしい。結構楽しんどいて悪いけど、やっぱりパクリだと思う。