みかぽん

ぜんぶ、フィデルのせいのみかぽんのレビュー・感想・評価

ぜんぶ、フィデルのせい(2006年製作の映画)
3.7
パリに住む9歳のアンナの世界は完璧だったのに、ある日両親が共産党のシンパとなり、住まいは広いお屋敷から狭いアパートへ。しかも家には髭もじゃの怪しげな人々が出入りし始め、大好きだった宗教の時間は両親の意向で受けさせてもらえなくなる。
おまけにキューバから亡命した(アンナと仲良しの)お手伝いさんは、政治犯で投獄中の旦那を持つ気の毒なギリシャ人女性を雇うためクビにされ。
そして、元お手伝いさんはこの家を去るときに、「こんなことになったのは全部フィデル(カストロ)のせいよ😤😤」と呟いたことで、アンナのお怒りはピークに達する。
「みんな、フィデルのせいなのね…😡😡」と。

とはいえ、この映画は別に思想がどうこうの映画ではない。
9歳の女の子が否応なしに巻き込まれる生活変化の中で、ものの見方や方向性が変わるだけで、完璧だった世界が色褪せたり、疑問が生まれたり、あるいは父親の矛盾するコミュニスト振りに素朴な不信が湧いてきたり。
両親の変容をきっかけに自分の意志を持ち、自分の内面世界を広げて行く彼女の自立っぷりが小気味良い映画だった。
 
物語の舞台は1970年代。パリは5月革命、チリではアジェンデ政権が軍のクーデターで失脚、スペインではフランコ将軍の独裁で政治犯はどんどん処刑されて行くというように、世界が、フランスが大きく揺れていた時代。
今、実際にアンナがいるとしたら50歳位?彼女はどんな女性になっているのかなぁ😊😊。

監督は巨匠・コスタ・カヴラスの娘さん。
アンナのお母さん役は、これまた俳優・ジュラール・ドパルデューの娘さん。
映画界はこの撮影当時、世代交代の時期だったのですね。
ちなみに、コスタ・カヴラス監督の〝ミッシング〟は、奇しくもピノチェト・クーデターに巻き込まれたアメリカ人(ジャック・レモン)の息子探しの話です(この映画、ワタシの中ではかなり高得点作品。ジャック・レモンが素晴らしかった!)。
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