「卵」に投稿された感想・評価

言葉にできない映画で、観賞後は他に観たことないものすごい傑作だと思った。思わず立て続けに2回再生。

数年前に観て以来、好きな監督3人聞かれたら、必ずセミフ・カプランオールの名前を出すほど、何か衝撃的に心に残った映画なのだけど、でも何が良いのか、全く説明しずらい。

映画をぜんぜん知らない頃、初めてジャームッシュを観たときの印象に近い気もするけど、それより遥かにゆっくりと、じんわりと染み込んでくる。

美術館で絵画を眺めているときの、ただただ途方もない感覚か。

三部作としてこれに続く、『ミルク』と『蜂蜜』も、同じくらい好き。
とにかく素晴らしかった。大胆なことをしていても、それが芸術性や前衛性と捉え間違えられないような、極めて深い懐が、この映画の静けさを決定的に支えていた。割合大胆な編集であるが、隠喩として長回しの匂いがあった。というのは、ここから始め、ここから終わりというカットではなく、すべてのシーンがひとつの恣意的な切り取りで、その前後があることを匂わせていた。だから映画の長さは短いが、体感は長く感じる。その隠喩が、ラストカットで解放される、この解放が特に素晴らしかった。
僕は長回しこそ映画の本領であると考えているが、この映画はその発想をひとつ先の次元で現してみせた。
映画が終わった瞬間おおっと歓声をあげてしまったほどの見事さ。作品としての次元が違う。
トルコのセミフ・カプランオール監督による【ユスフ三部作】1作目です。

映画としては『卵』→『ミルク』→『蜂蜜』の順番です。
覚え方としては、採取が楽な順です。

卵はそこにあるのを拾えばいい。
ミルクは絞らなきゃいけない。
蜂蜜はだいぶ危険を犯さなければならない。

時系列的には『蜂蜜』→『ミルク』→『卵』の順になります。
それぞれ少年ユスフ→青年ユスフ→おじさんユスフです。

映画の順番だとどんどん若返っていくわけです。


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この映画の主役ユスフはおじさん。独身。
イスタンブールで古書店をやってますが、そんなにやる気はない。

何に対してもやる気がない。
電話がかかってきても留守電になるまで取らないのが普通だし、
留守電聞いてから必要があれば掛け直す男。

人との距離がだいぶ遠い。
でも、人当たりは良い。失礼な態度を取ることはないし、十分優しい心を持っている。

でも、やはり人に心を見せないし、人の心に入っていこうなどということはしない。


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なぜおじさんユスフはこういう男になったのか、
を時系列的にさかのぼりながら見ていくのがこのユスフ3部作ですね。


ですけど、
『卵』を一本目として見るのって本当に難しいことだと思うんです。。

ユスフはほとんど喋んないし、
母が死んだとこからスタートするし、
ユスフのことも全然わかんないのに
謎の親戚美女が出てくるし
突然、てんかんでぶっ倒れたりするし、
意味不明だと思うんです。。


*****


僕は『蜂蜜』→『ミルク』→『卵』の順で見たので
あの可愛い可愛いユスフが『蜂蜜』で起きた事件を背負って
『ミルク』の思春期を過ごして
『卵』でのこんなおじさんユスフになっちゃった。。という流れで見れたので見やすかったです。

監督の意向とは違うのは重々承知なのですが。。


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櫻

櫻の感想・評価

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生まれたばかりのように青々とした葉。うっすらと霧のかかった曇り空。淡く霞んで境目を隠して、静寂とうつくしさを放っている。やさしい顔をしたその人は遠くからやって来て、すっとまた消えていく。一番はじめにこの世で見た懐かしい顔。

光のち闇。曇りのち晴れ。明滅したり、移り変わったり。ゆっくりと動きながらも確かなもの。精悍さを奥に秘めた、表面の柔らかくて温和なもの。ひとつひとつに目を凝らしてもきっとどれも抜け落ちてしまうほどに微細だが、どれが欠けても過去は存在しないのだと知る。かつて居たあの人の面影をしながら、それは後ろから静かに時間をかけてやってくる。

そこは帰る場所、還る場所。おかえり。
ヘルパー

男は心に何らかの傷を受けておりますが、それはまた別のお話。
netfilms

netfilmsの感想・評価

3.9
 カプランオールの自伝的物語を描写した三部作は青年期から思春期へ、思春期から幼年期へと徐々に時間が退行していく不思議な物語である。イスタンブールで暮らす詩人のユスフは、母親の死の知らせを受け、何年も帰っていなかった故郷に帰る。古びた家に帰るとアイラという美しい少女が彼を待っていた。ユスフは、5年間、母の面倒を見てくれていたというアイラの存在を知らず、アイラは母の遺言をユスフに告げる。遺言を聞いたユスフは遺言を実行する為に旅に出る。失われていた記憶が甦ってくる。それは、ユスフ自身のルーツを辿る旅となった……。ユスフと母親とのギクシャクした関係の理由が今作ではまったく描かれない。牛乳屋として仕事に励みながら、詩人を目指していた思春期のユスフ少年は、愛する母親に男がいると知り、母親を否定し半ば無理矢理に大人への道筋をたどっていく。あの『ミルク』の物語の延長にこの物語があるならば、母親と距離を置くために、故郷から遠く離れたイスタンブールでの生活をユスフ少年が選択したことは容易に想像がつく。

 最初は頑なに母親の葬儀を拒み続けたユスフの心に様々な心象がフラッシュバックし、張り詰めていた心にある霊的な瞬間が訪れ、あちらの世界でユスフと母親は交信する。けれどそれはトンデモ映画の方法論ではなく、真に霊的な美しい瞬間として主人公を包み込む。あの場面の美しさは実際に映画に触れなければわからない。本来ならば『蜂蜜』を観た後でこのシーンを観れば、父親の死と母親の死が密接な関係を持っていることに気づく。2作目3作目でも主人公の癲癇の発作の場面は繰り返し出て来るが、その癲癇の発作こそが主人公に異界との交信をさせる契機となる。今作において最も重要なのはサーデット・アクソイの表情に他ならない。彼氏との会話の中で、イスタンブールで勉強したいと告げる彼女の存在は2作目『ミルク』の中の思春期のユスフ少年と少しダブって見える。今作はトルコ社会における死の悲しみと生の喜びを同時に享受し、世代から世代へとゆっくりと確実に流れていく季節を的確に描写している。ショットの構図も印象的なロング・ショットからクローズ・アップへヨーロッパ映画らしからぬ粒子の粗い映像で淡々と綴られる物語は、奇跡のような連環を成す。
オススメだというので手に取ったはいいが、ここのレビューを見るに三部作のうちの一作目だったそう。
印象的なロングショットや顔のアップが多く、過去にみたトルコ映画もこんな空気感だったなと思った。
ユスフがバッタバッタと気絶しているのは大丈夫なのか?(大丈夫ではないわな)

親のありがたみは死んで初めてわかる、というのはやっぱり万国共通なのか。
自分のルーツを辿る旅という謳い文句言葉にはめっぽう弱い。

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Okuraman

Okuramanの感想・評価

3.5
ユスフ三部作の最後or最初、監督の感傷的な帰郷に付き合わされてる気分。他二作の瑞々しさは失われていた。めちゃくちゃチャイ飲むシーン、あと細々した料金払うシーン多い...。
ユスフ三部作のうちの1つ。
なんか映像と音声のどちらもが澄んでいて、詩的な感じだった。
物語はよく分からないけど、自分で行間を考えながら観るんだろうなぁって。
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