ディア・ハンター デジタルリマスター版、全盛期のデニーロの映画を人生初でスクリーンで観れたのが嬉しかった。
前半の結婚式のシーンがやや長く感じたが、後半の悲劇をより大きなものにするための重石として止む無しといったところか。
ひとたび壊れた心は程度によるだろうが、ほぼ修復不可能なのだと。
それが凄惨なものなら尚更である。
ショックが大きければ大きいほどそれは人の精神を蝕み、やがては人格までをも破壊されるに至る。
歴史としての戦争が終結しても、戦争体験者の「記憶の中の戦争」は永遠に終結しないのだと。
ラストのウォーケンとデニーロのやり取りは圧巻である。
ウォーケン演じるニックがロシアンルーレットに倒錯してしまったのも、戦争というすべてが凄惨な光景を通して「この世」に対する全てに絶望し、それと同時にあの時の体験を忘れるような強い刺激が無ければとてもやっていけなかったのだろう。
また、ロシアンルーレットを通して何処か心の底で自死を切望していた部分もあったようにも感じた。
自死推奨派ではないが、「死」は、ありとあらゆる生命あるものの、最終手段、、、「最後の救済」なのだ。
最後の最後に涙を流したのも、マイケルの心の底からの呼び掛けで戦争前の「ありふれた日常」を一瞬だけだが想い出したのだろう。
そしてこれまでの苦難からの「解放の時」が来たのだと悟ったのだろう。
あの涙は
恐怖や絶望の類のものではなく、ニック―
彼にとっての安堵、感謝の涙なのだ。
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