Ryo

ディア・ハンターのRyoのレビュー・感想・評価

ディア・ハンター(1978年製作の映画)
3.9
戦争によって引き裂かれた友情と精神を蝕む体験。戦争中、戦後正気を保つことがどれだけ大変で厳しいか思わせられる。
戦争から無事に帰ってきたとしても傷は一生癒えない。

反戦メッセージが強くおそらくマイブラザーに影響を与えたであろう作品。
ジョンカザールの遺作。

ベトコンを一方的に残酷に描き、アメリカ軍による現地住民に対する虐殺行為や、枯葉剤の散布といった功罪の描写も少ないことから「ベトナム戦争の正当化」「ベトナム人に対する差別」と捉える人も少なくない。

ータイトルー
鹿の猟人を指すタイトル『ディア・ハンター』は、角の立派さが美しく気高く見える鹿への敬意からかマイケルは”1発”で仕留めることに拘っていました。鹿猟と戦争を重ねて、命を奪われることの恐怖や苦痛を考えれば、「戦争だからでは、人の命を奪うことは正当化されない」と画いて戦争を批判している映画という感じがします。


ーラストー
正気に戻ったように思えたニックは引き金を引き死んでいく。PTSD(心的外傷後ストレス障害)の影響が強いということを示唆している。ニックは図らずも精神が壊れたお蔭でPTSDの苦しみから逃れていたけど、マイケルの友情からくる熱意で良いか悪いか一瞬正気に戻ってしまった(”1発”という言葉を思い出し愛する町での能天気で楽しかった生活を思い出し笑ったようにもみえる)。正気に戻ればPTSDの苦しみも戻るはず。
押さえているマイケルの手を強引に振りほどき銃を撃ったところに強い意志が感じられ、狂人がするロシアンルーレットゲームではなく、正気の人間がする自殺という気がします。
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