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ディア・ハンターのKKMXのレビュー・感想・評価

ディア・ハンター(1978年製作の映画)
4.6
 ベトナム兵の描き方等、いろいろと批判のある作品とのことですが、個人的には傑作だと思います。実に観応えのあるガーエーでした。


 観客にもかなりの緊張を強いてくる、あまりにも有名なロシアンルーレットのシーンはインパクト最大ですが、それ以上に心に残るのは、デニーロ演ずるマイクが帰郷してからの展開です。かけがえのない日常の幸福が、戦争によりばっちり奪われていく描写が見事すぎました。序盤の日常パートが丁寧だからこそ、より強く伝わります。

 また、細々としたシーンがとても丁寧に描写されているのが本作の特徴だと思います。
 マイクの変化もそうですが、印象に残っているのは、婚約者ニックが生死不明な状況のなか、メリル・ストリープ演じるリンダが突如働いているスーパーでボロ泣きするシーンでした。なんというか、あの頃から世界が完全に変わってしまった、しかも悪い方に…そんな思いが突然襲ってきての涙のように思えました。
 この、変わってしまった世界の描き方が本当に真に迫っているように感じました。

 このように本作は演出が抜群に優れており、戦争で失われる幸福、変わってしまった世界といった悲しみがズシンと伝わります。悲しみ、という言葉も正直軽いような、言葉にならないものが洪水のように迫ってきます。むむぅ…


 ただ、長尺映画が苦手な私にとっては流石に尺が長すぎましたね〜。飽きはしませんでしたが、集中力が維持できなかった。特にラストの展開はかなりグッときそうなのですが、ニックへのマイクの言葉もフーンて感じで流してしまい、気がついていたら終わっていたという体たらく。集中力が持ったら、もっと味わえたのに残念です。まぁこれは体質だから仕方がないっす。


 演者について。とにかく、若きメリル・ストリープが信じられないほどの美女!今のゴツいおばちゃんのイメージが強かったのでギャップに衝撃です。昔から老け役の智衆タイプの女優と思ってましたが大きな間違い!ゴージャスな金髪がセクシーすぎる、肩もたおやかなスーパー美女で度肝を抜かれました。ヤングストリープ、すっかりファンになってしまいました。
 あと、脇役スタンを演じたジョン・カザールさん。顔色がめちゃ悪くて心配だったので鑑賞後wikiを調べたら、なんとこの時ガンに罹患していて、封切り前に亡くなったとのこと。しかし、彼はヤングストリープの婚約者だったとのことで、早逝してしまいましたが、うらやましい人生だったと言えなくもないかも。デニーロ、ウォーケンは言うまでもなくカッコいいです。


【追記】
 鑑賞から10数日経ったある日、突如本作のエンディングがフラッシュバックしました。鑑賞直後はそれなりに良いと思えたのですが、思い出した瞬間は、めちゃくちゃ心が震えました。何故なのか、理由はわかりませんが、改めて歴史的な傑作だと実感しました。
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