亘

ノッティングヒルの恋人の亘のレビュー・感想・評価

ノッティングヒルの恋人(1999年製作の映画)
4.3
【さえない男の夢の恋】
ロンドンの下町ノッティングヒル。さえないバツイチ男ウィリアムは小さな書店を営んでいた。ある日ハリウッド女優アナが彼の店を訪れる。それは別世界に住む者同士の恋の始まりだった。

"現代版ローマの休日"とも呼ばれるラブコメディの傑作。ラブストーリーとしても良作だけど、なによりコメディ要素・ほっこり要素がクォリティ高い。ウィリアムがさえない男で恋愛に不器用だからこそアナとのやり取りで時折シュールな展開が訪れる。その場面では上手くいきそうでいかないむずがゆさもありながらシュールな笑いもある。さらにウィリアムの同居人スパイクなど人情味あふれる彼の仲間たちがさらにコメディ要素を盛り上げている。

ウィリアムはロンドンの下町の旅行専門書店の店主。彼自身弱気でバツイチだし書店は赤字続き。自宅では、怠け者で品のないスパイクとルームシェア。何一つさえないように見え、なんでもない日々を過ごしていたけどある日転機が訪れる。ハリウッド女優アナ・スコットが来店したのだ。とはいってもウィリアムは口説くわけでもなく普通の客と同様に接するだけ。しかしその後街中で彼女の服にジュースをこぼしてしまったことで2人は近づき始める。

2人は接近するけど2人のはじめのころのやり取りは少し滑稽。ウィリアムが雑誌『馬と猟犬』の記者を装ってインタビューしたり水中眼鏡をつけて映画を見たり。特にウィリアムが雑誌のインタビュアーとしてホテルにいる様子は居心地が悪そうだった。とはいえこのデートを経て別世界の2人は互いを深く理解し始める。アナは親しみやすさを見せるのだ。例えば友人の家での"惨めな人コンテスト"では堂々と自らの悩みを話し、庭園ではルールを破り無邪気な笑顔を見せる。いつだってアナは"セレブリティ"というフィルターを通して見られてしまう。しかし彼女自身そんなフィルターなしに一人の女性として見てほしかったのだろう。

1人の女性とはいっても、セレブリティはセレブリティ。アナはかつて撮影されたヌード写真を巡りマスコミに追われる。そこでウィリアムに助けを求めるがスパイクのせいでパパラッチがウィリアムの家に押し掛け2人はすれ違う。スパイクにいらついてしまうシーンではあったけど、ある意味これはセレブリティの宿命なのだろう。それまで2人は身分の差を乗り越える相互理解をしてきた。この事件は2人の努力を無にするものだったし、2人のすれ違いは残念だった。"I will regret this forever(私はこれを永遠に悔やむでしょう)"というアナの別れ際の言葉は突き刺さる。

1年が過ぎウィリアムはの元に、アナがイギリスにいるという情報が入り彼はロケ地に踏み込む。彼はアナをあきらめきれていなかったのだ。とはいえ彼は弱気な男。アナが他の俳優と話している内容を聞いて立ち去り、その後書店でも彼女を突き放してしまうのだ。結局アナは別世界の人だったのか。今作の中でも特にウィリアムの心の弱さが表れたパートだろう。ただ何よりこのパートで目立ったのはスパイクたち友人の友情。アナの記者会見にウィリアムが間に合うよう友人たちが奔走するのだ。友人たちの温かさを感じたし、クズキャラだったスパイクが友達思いな様子を見せるのは感動的だった。

今作のクライマックスは最後の会見だろう。そしてこの記者会見こそ今作が「ローマの休日」と重ねられる理由の1つである。「ローマの休日」ではアン王女の記者会見で切ない終わり方をする。一方で今作はアナの記者会見でハッピーエンド。記者の中でウィリアムが浮く姿は、アナの雑誌インタビューでも見たけど、ウィリアムは勇気を持ってアナに一般人との恋愛騒動を尋ねる。これは「ローマの休日」のジョーたちが少し上から目線だったのと違うように感じた。そして「ローマの休日」の切ない終わり方と対照的な明るい終わり方は今作の見どころ。Sheの美しい歌声とアナの笑顔で始まるエンディングはいつまでも見ていたいほど幸せにあふれている。

印象に残ったシーン:最後の記者会見でのジュリアロバーツの笑顔
印象に残ったセリフ:最後のジュリアロバーツの"infinitely"

余談
撮影は実際にノッティングヒルで行われ地元住民の協力も得たらしいです。あのウィリアムの家は当時リチャード・カーティスが所有していて青い扉は後にチャリティーオークションにかけられたそうです。