Baad

光の雨のBaadのレビュー・感想・評価

光の雨(2001年製作の映画)
2.7
見た時点では、大いに不満の残る作品でしたが、最近「実録連合赤軍あさま山荘への道程」を見て、この映画はこの映画なりに存在意義はあったということで、少し評価してもいいかな、と思う様になりました。

とはいえ、それなりに原因があって起こった総括殺人が、いかようなる集団においても、極端に追いつめられた状態になれば起こりうる集団ヒステリーから来る殺人事件として見えてしまっては、事件の衝撃の大きさを描いてみせただけのことに終わってしまうのわけで、これはやはりこの作品の大きな欠陥と言わざるを得ないでしょう。「実録連合赤軍あさま山荘への道程」では、役者の表情からそれと分かったリーダーの恐れを、役を演じる山本太郎が演じるところの役者のリハーサル前の独白として語ってしまったことなどはいかにも上手くないやり方に思えてなりません。

逆にこの映画の長所といえる部分は、登場人物達が演じる人物や監督など、事件当時を生きていた人たちの心情に寄り添った物語の描き方で、それはそれなりに見応えがあります。ただ、それは事件を心情的に共有できた人間に向けた表現でしかないわけで、十代でこの事件を報道で読んだ私などには、ただただ反省のない自己憐憫に満ちた表現に見えるものでしかなく、部外者とっては取りつく島もないものなのでした。何よりも致命的なのは、演技をしている役者達が、演ずる役の人物より遥かに賢くたくましく見えてしまったこと。たとえ同時代に生きていたとしても、この人たちは役の人物よりは多少なりともましな生き方をしたことでしょう。

結局のところ、その愚直なまでの率直さは買えるものの、この物語で描かれていることは、衝撃的な事件に遭遇した劇中の監督が事件当時のまま判断停止している、ということだけに過ぎず、これが映画として通用すると思うこと自体、数を頼んだこの世代のおごりにも思えてくるのです。

(判断停止を映像化する 2008/5/9記)
Baad

Baad