ねこたす

8 Mileのねこたすのレビュー・感想・評価

8 Mile(2002年製作の映画)
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なあ、もしたった一度のチャンスが、一瞬のうちに欲しい物全てを手に出来るチャンスがあるとしたら。
お前は掴み取るか? それともただ逃すのか?

英語なんてほとんど分からないし、リリックや韻の踏み方のかっこよさも分からないラップ弱者が見ても感じ取れるかっこよさに満ち溢れていた。
俳優ではないラッパーのエミネムの演じていない、彼の歴史が全て詰まっているのだろう。

恵まれない環境にいても、黒人ばかりの中に一人白人。しかも顔がいいから目立つ。それでも、ボンクラ男としての存在感がきっちり出せている。
特に"目"が印象的だ。彼はいかように世界を見ているのだろうか。

廃れに廃れた都市デトロイト。もはやほとんど何も残っていない。廃墟ばかり。でも、それは遊び場がたくさんあるということの裏返しだ。人さえ集まれば、サイファーができ、駐車場だって立派なライプ会場になる。
エミネム演じるジミーも所持品はほんとんど持っていない。ウォークマンが彼の唯一のアイテムであり、トラックを聞きながら、バスの中からだって外を眺めボキャブラリー増やし、リリックをメモる。いつでも戦えるように武器を磨いているのだ。戦闘意欲は無くしちゃいないのだ。

映画に出てくる人々の実在感がとても強い。2回握手して胸をぶつける、彼らお馴染みの挨拶があるだけで彼らが生きていると思える。仲間もどうしようもなくバカだったり、デブだったり。それでもドジ踏んだジミー気遣ったり。大切な仲間たちなのだろう。

母さんもどうしようもないほどのホワイトトラッシュ。見てれば若干イラついてしまうけども、そうしてしまうのも行き方なのだ。どんなにクソだって、大切な家族。

家族も、友情も、女も、栄光へのチャンスも、そして肉体的にもズタボロになりながら。もう失うものなんてないのに、なぜ逃げるのだ?

ひたすら問いかけられる。なぜやろうとしない。ほっとけ俺の人生だ!と言っても、現状は何も変わらない。

自分を裏切ったと思った女は、夢のチケットを手に入れた。
その瞬間から覚悟が出来た。バトル前には緊張で吐いていた小心者が、もうビビったりはしない。

BAZOOKAの高校生ラップ選手権でフリースタイルバトルを知ったニワカでも、MCバトルってこんなにかっこいいんだと驚ける。ジミーが口から紡ぎ出すリリックが、相手を圧倒しているのは日本人が聞いたって分かるはずだ。
肌の色が違くったって、スキルで認めれば一発で味方になる。単純だけど、残酷だ。

そして、相手に責められるような自分の弱点をさらけ出し、これが俺の人生だ。だからどうした?と言わんばかりに己の全てをぶつけたライムに震えた。その90秒で世界は変わったのだ。

この映画を見た後じゃ、それまでとLose Yourselfが全く違う歌のように聞こえる。こんな良い歌詞だったのか。


ーいつ、夢を諦めたらいい?
ーまだ、朝の7時半だぜ。