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8 Mile(2002年製作の映画)
5.0
夜ごとラップバトルが繰り広げられる「シェルター」では黒人が主役です。白人である主人公が逆にニガーと呼ばれて蔑まれ、クロの真似をするな、帰れ! とブーイングを受けます。黒人たちには人種的マイノリティとしての絆やコミュニティがありますが、白人のエミネムにはそれすらありません。貧しいトレーラー暮らしに耐え、ヒップホップで頂点を目指そうにも認めてはもらえず、八方ふさがりです。

彼は物語が始まってからずっと、言い訳を重ね、進む道を決めあぐねている一人の青年に過ぎません。しかし自分の逃げ場や大切なものが全て奪われ、失意のどん底に落ちた後で、彼は遂に覚醒します。自分の苦境や惨めさ、怒りや悲しみをリリックにのせて満員のオーディエンスを煽り、味方につけていく様はラップの神が乗り移ったかのようです。誰より孤独な人間だからこそ、人としてのしがらみを超越した存在へと、一歩を踏み出せるのです。

私個人の思い入れを度外視してこの映画を観た場合、淀んだ日常の描写が多いとか、ヒップホップという文化にある程度興味を持っていないとカタルシスを得るのが難しいとかそういった難点もあるかと思います…しかしそれでも、自分という敵に立ち向かう普遍的な青春の物語として、多くの人にお勧めしたい作品です。
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