EDDIE

8 MileのEDDIEのレビュー・感想・評価

8 Mile(2002年製作の映画)
4.0
エミネムの半自伝的映画。彼の成功秘話ではなく、自分で選択し挑戦することの意義を教えてくれる。青春時代に“8Mile”を観て勇気をもらった人々は同志だ!

Netflixでたまたま目に入ったので、久しぶりに鑑賞したくなり観てみました。
エミネムを音楽の世界だけでなく、世界的大スターに押し上げるきっかけとなった作品でしょう。
初鑑賞時は自分は高校生でしたが、本作が物凄く印象的で思い出の映画の一つであります。

30を超えて改めて鑑賞してみると、アメリカの貧困問題や性犯罪など、社会問題に追求した作品としても評価されるべきだと再認識。
そして、何よりもエミネムの本職ラップだけでなく、俳優エミネムとしての演技もなかなかのものです。
半自伝的映画ということで、エミネムの半生を題材にしているもののあくまでフィクションの立て付け。だけど、エミネム自身がラップバトルで成り上がっていった事実があるので、脚色はあれど、やはり彼の物語として見ても間違いはないと思います。

本作の主人公はB・ラビットことジミー・スミスJr.。演じるエミネムの本名はマーシャル・ブルース・マザーズ3世です。
彼らラッパーはa.k.a(as known asの略で別名の意味)と称してあだ名を付けるのが通例ですが、エミネム本人はエミネムがあだ名みたいなものですが、「スリム・シェイディ」という別人格を持っています。

本作『8Mile』ではバニー・ラビットがジミーの別名a.k.aなわけですね。ラップが黒人文化のもので、白人には扱えないと揶揄されることに対する反骨心のような名前です。
ジミーは犯罪の絶えない地区で母と妹との3人トレーラー暮らしを続けていることから、犯罪のない8マイル先の地区へ行く夢を抱いています。
もともと父親に捨てられ、母親から虐待されながら極貧状態で生きてきたエミネムの半生とも多分に重なりますね。

ただ本作は成功して成り上がっていく物語というよりは、ジミーという少年が大切な友人たちと日々を過ごしながら、自らやるべきことを選択して挑戦するという構成が特に素晴らしいんですよね。
また本作で母親との関係が上手くいっていないジミーですが、最終的なアプローチがエミネム自身の願望が含まれているとも見て取れました。
仲間外れにされたり、虐められたり、自殺未遂までしてしまったエミネムの反骨心が大いに込められた作品と言えるでしょう。

またエミネム以外の出演者にも注目すべき役者がたくさん出ています。
彼の母ステファニー役に『L.A.コンフィデンシャル』でアカデミー賞助演女優賞のキム・ベイジンガー。自分の母親の性生活のお悩み相談だけは本当に勘弁してほしいものです。あまりにも生々しい話なので、ここでは控えますが、絶対にあんな話を母親にはしてほしくないですね。
ジミーの恋仲になるアレックス役にブリタニー・マーフィー。本当に絶世の美女で、当時はとても憧れたものですが、32歳の若さで心不全により亡くなっているのが残念すぎます。本作のブリタニーは本当に可愛らしい。
ジミーのライバルでラップバトル前回大会覇者のパパ・ドク役で本作スクリーンデビューのアンソニー・マッキー。今やMCU作品のファルコンでお馴染みの彼もまだあどけなさが残る初々しさがいいです。ただラッパー覇者の役柄であるにも関わらず、ラップではいいとこなしだったのが悲しいですね。
あとはジミーの友人の1人ソル・ジョージ役のオマー・ベンソン・ミラー。とても体格の大きな彼ですが、ちょこちょこ映画の端役として出演しており、優しそうな表情から彼が出ていると妙な安心感を覚えます。最近は全然見掛けませんが、俳優業は引退してしまったのでしょうか。

10数年ぶりに鑑賞しましたが、やはり青春時代に思い出になっている作品は久しぶりに観てもいいものですね。
当時“8Mile”のサントラも買いましたが、ラップ楽曲として初のアカデミー賞歌曲賞を受賞した“Lose Yourself”は最高の流れでエンディングに突入します。劇伴が全体的に素晴らしいですよね。

※2020年自宅鑑賞289本目
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