ブタブタ

ゴッド・アンド・モンスターのブタブタのレビュー・感想・評価

4.7
《ダークユニバース》のプロローグ特別映像でDr.フランケンシュタインが「神と怪物の新世界が始まるのだ!」と叫ぶシーン。
『フランケンシュタイン』のこの映像が本作にもジェイムズ(イアン・マッケラン)のフラッシュバックとして登場する。
それと劇中で『フランケンシュタインの花嫁』の撮影風景が再現されていてコレも既に《ダークユニバース》を先にやってます(笑)

昔真夜中に起きてテレビをつけたら劇中劇の主人公二人で再現された『フランケンシュタイン』のモノクロ映像が流れていて意味不明ながら最後まで見てしまった。
のちにこれが『ゴッド・アンド・モンスター』と言う本作と知ったのですが。
アカデミー脚色賞受賞にも関わらず日本では当初劇場公開されずファンの活動により劇場公開に漕ぎ着けた作品。

『フランケンシュタイン』『フランケンシュタインの花嫁』の監督ジェイムズ・ホエールの自宅プールでの変死。
自殺との事で間違いないらしいですが、本作はその死に至るまでの最後の日々を描く。

実在の人物であるジェイムズ・ホエール監督はゲイであり晩年を迎え、嘗ての恋人たちや従軍したクリミア戦争での想いを寄せた兵士の残酷な死、少年時代恐らくは厳格な両親や教会(キリスト教)から自らのゲイである事実を否定されていた記憶、蘇る過去の記憶と幻影に苛まれている。

嘗ては世界的な名声を得た映画監督でも今は世捨て人同然で、メイドと2人だけで郊外の邸宅で寂しく隠遁生活をおくるジェイムズ。
そこへ海兵隊上がりの屈強な肉体を持つ庭師クレイトン(ブレンダン・フレイザー)がやってくる。
今は絵が趣味であるジェイムズはクレイトンに絵のモデルになってくれるよう頼む。
絵のモデルとなったクレイトンにジェイムズは絵を描きながら自らの半生、赤裸々な同性との恋愛遍歴を語って聞かせる。
クレイトンはジェイムズに初め強い嫌悪感を抱くもののやがて強く惹かれている自分に気づく...

これも或る意味『フランケンシュタインの花嫁』のリメイクなのでは。
ゴッド・アンド・モンスターとは意訳すれば「創造主と怪物」でしょうか。
『フランケンシュタイン』を作った男ジェイムズと彼の生涯最後の恋人(だと思う)であり言わば『フランケンシュタインの花嫁』となる男クレイトンの話し。
これもまたダークユニバースのひとつと、今思えばそんな風にも感じます。

嵐の夜、ジェイムズの前で全裸になり肉体を晒すクレイトン。
「私の怪物になってくれ!」
と自らを殺すように頼むジェイムズ。
クレイトンはジェイムズのもとに現れたフランケンシュタインの「怪物」であり「花嫁」だった。

幻想の世界でフランケンシュタインの怪物となったクレイトンに手を引かれジェイムズが向かった先は死んだ兵士たちの墓場で嘗て戦場で思いを寄せた兵士の傍らで眠りにつくジェイムズ。

『シェイプ・オブ・ウォーター』の半魚人、『ゴッド・アンド・モンスター』のフランケンシュタインと両方ともアカデミー賞受賞作品で個人的には之こそが正に《ダークユニバース》(だと勝手に思う)

時は流れ自分の子供にテレビで放送されている『フランケンシュタイン』を見ながら「この監督と自分は友達だったんだ」と言うクレイトン。
そして雨の中をフランケンシュタインの怪物の歩き方で去っていくクレイトン。
クレイトンにとってジェイムズは「最初で最後の恋人」だった。
この二人の出会いと別れ、過ごした短い日々は素晴らしく、そして余りにも美しくせつない。

等と感想を書いていたのですが、監督のビル・コンドンはメガヒット中の『グレイテスト・ショーマン』の脚本『美女と野獣』の監督等々推しも押されぬヒット監督になってますが何と現在暗礁に乗り上げつつあるダークユニバース次回作『フランケンシュタインの花嫁』の監督だと!
本当に『フランケンシュタインの花嫁』を撮る?!
果たしてどうなりますか...
ブタブタ

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