せーじ

魔女の宅急便のせーじのレビュー・感想・評価

魔女の宅急便(1989年製作の映画)
4.3
金曜ロードショウ(2018年1月5日放送)で鑑賞。

リアルタイムで観た時(当時小学生)なぜキキが突然、他の同世代の女の子の前で怒りだしたり、様子がおかしくなってしまうのか、まったく意味がわからなかったことを思い出した。

今にしてみるとこの作品は「コンプレックスとの対峙」が主題なのだろうなぁと思う。誰が見てもわかるような誰にも真似できない個性と才能を持つキキでも、手にしていないものや足りないと感じているものはあって、誰かを羨ましいと思うこともあるのだ、という。
けれども彼女は終盤、飛べるかどうかわからないのに、ほぼ躊躇することなくトンボを助けに行く。本能的に自分にしかトンボを助けることができないと確信し、絶対に助けると信じてデッキブラシに跨ったからこそ彼女はトンボを助けることができたわけだけれども、キキがそう出来たのは、「魔女の血」という才能だけではなく、やはり彼女の周囲にいる人々の"良くも悪くもな関わり"に依るところが大きいのだろう。
(そういう意味では、先輩魔女や届け先のニシンのパイが嫌いな少女も、キキの成長を促している存在だ、ともいえる)

そのあたりの大切さをさりげなく描いているところが素晴らしい作品なんだよな…と改めて思う。「独り立ちとは、一人ぼっちで生きることに非ず」なのだという。
もちろん「キキには助けてくれる人が沢山いていいけど、現実はそんなに甘くはないよね」という見方をすることもできるが、そうではなくて「キキや、その周りにいる人たちのように、困っている人を見かけたら、お互いに助けあうのが、本当の意味での人間的な社会なんだろうがっ!」と言えるのではないだろうかと思う。
多くの人の手で作られていくアニメーションという手法で語られるべき題材であり、作品であろう。
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