よねっきー

魔女の宅急便のよねっきーのレビュー・感想・評価

魔女の宅急便(1989年製作の映画)
4.6
マーベル映画では女が宇宙をかっ飛び、DC映画では女が男をバットで殴っている。現代とは女が女を表現する時代だと思う。だけど宮崎駿って男は30年前に空をふわり飛んでいく女の映画を作っていて、彼女が成長し挫折する姿、その一つ一つに隠れた感情、そこに向けられた視点はちょっと信じられないほどに的確だ。現代には彼のような人が足りない。胸を張って女を描ける男や、胸を張って男を描ける女が、この世界に足りない。

何が恐ろしいって、13歳の少女の奮闘物語だけで「女の一生」を描いてしまっているところだと思う。キキという少女はきっと、ウルスラのような大人になり、オソノさんのような働く女性になり、自身の母のような母になり、ニシンのパイの老婦人のように一生を閉じていくことだろう。それが観客には直感的に伝わるのだ。街を歩くキキの表情がすべて語っている。彼女が周りの女性に憧れながら育っていくだろうことは自明だから。

新生活の映画としても、女を描いた映画としても、表現者を描いた映画としても、完璧に美しい。この薄暗い時代に必要な映画だったんじゃないかな。
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