みおこし

魅せられてのみおこしのレビュー・感想・評価

魅せられて(1996年製作の映画)
3.4
母の自殺後、イタリアのトスカーナ地方でひと夏を過ごすためやってきたアメリカ人のルーシー、19歳。彫刻家のイアンやその家族、かつての初恋の人ニコロ、そして余命いくばくもない作家アレックスなど個性豊かな人々との交流を通じ、次第に大人の階段をのぼっていく。

イタリア映画を意識的に観よう、ということで巨匠ベルトリッチ作品をチェックしていたら本作を観ることに。
『アルマゲドン』前でまだ本格ブレイク前のリヴ・タイラー主演。監督が監督なので、直接的ではないにせよ官能的な雰囲気が多々溢れる作品でした。透き通るような肌、つややかな漆黒の髪、ピンクのぷるぷる唇...女性の私から観ても「魅せられ」てしまうリヴの美しさ。半トップレスのシーンもありましたが、いやらしくないし、まるで絵画のような印象で、さすがベルトリッチの手腕がなせる技だな、と...!

ジェレミー・アイアンズ演じるアレックスはじめ、周りの男性を瞬く間に虜にし、甘えてみたかと思えば嫉妬させたり...ひたすら小悪魔なルーシー。おじさんたちのやらしい視線に気づいているんだろうけれど、まだ自分では恋や愛についてもよく分かっていなくて、何とか男性の前では自分を大人に見せようと背伸びしている感がまたリアル。
両親ともにいなくなり、頼るべき存在がいない中で、大人になるってどういうことかをイタリアでの夏の間に色んな人との出会いを通じて手探りで学んでゆく。ラストのリヴの微笑みが、冒頭のいかにも少女という感じの屈託のない微笑みとはちょっと違って見えたのが印象的でした。

パーティーのシーンはじめ、目を見張るほどのトスカーナ地方の景色の美しさ。どのカットをとっても絵になる。リヴはじめ、登場人物の衣装も色鮮やかなものばかりで、今すぐにでもイタリアに飛んだみたくなりました。
アレックスがルーシーに語りかける場面で、「君を見ているだけで幸せだった」というセリフを残すのですが、本当に飾りのない生まれたままの美しさって大切なんだなぁ、そして若さって素晴らしいなぁとしみじみ...。純粋無垢ほど尊いものはない、そんなメッセージを感じた作品でした。
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