うめ

あの頃ペニー・レインとのうめのレビュー・感想・評価

あの頃ペニー・レインと(2000年製作の映画)
3.5
 アカデミー賞もノミネートが発表されて、あとはその他の賞の結果を見ながら授賞式を待つだけとなりました。日本ではノミネート作品の公開も控えており、日に日にわくわくどきどきが高まる今日この頃ですが、やはり少しアカデミー絡みで映画鑑賞も出来たらいいかなぁと。そこで今作。今作は第73回アカデミー賞脚本賞受賞、それから助演女優賞(ケイト・ハドソンとフランシス・マクドーマンド)、編集賞ノミネートを果たした作品。1973年を舞台にした音楽ドラマで、キャメロン・クロウが自身の経験を基に監督・脚本・製作を務めた作品。

 1973年。15歳のウィリアムはローリング・ストーン誌のライターとして、ブレイク寸前(=Almost Famous(原題))のバンド・スティルウォーターのツアーに同行、密着取材をすることに。彼らにはグルーピー(追っかけ)と呼ばれる女の子が数人ついて来ていたが、その中の一人、年齢不詳で不思議な魅力を持つ「ペニー・レイン」にウィリアムは好意を寄せていた。しかし、ペニーはバンドのギタリスト、ラッセルと付き合い始めて…。15歳でライターの仕事をする「大人になっていない子ども」のウィリアムと、売れ始めているものの、ツアー先でトラブル連発の「子どものままの大人」たちの、笑い溢れるストーリー。1973年当時のロック音楽が終始流れたり、途中からバスでツアーを回るので、ロードームービーのような趣もあったりと全体に陽気で楽しい雰囲気に包まれている。

 けれど、これはもしかしたらとてもよく当時の状況を表しているのではないかと思った。戦争や差別に大きく抵抗する力が肥大して、国や世界を動かしていた(であろう)1960年代が過ぎた1970年代。劇中でロック音楽が商業主義によって破滅させられているなんて言われていたように、70年代は60年代のロック音楽の力、世界を動かす力が分散して威力を無くしているように見えた時代だったのではないだろうか。(でも、だからこそグラムロックとかオルタナティブ・ロックとか色んな派生が生まれたのだろうなと思うのだが。この辺りが『ベルベット・ゴールドマイン』を早く観ねば。)その、ある意味力を無くしたロックの姿、人の姿が今作では描かれているような気がした。確かにステージのパフォーマンスは魅せるのだけれど、裏では酒にドラッグ、しかもバンド内の確執…ロック音楽に内包されているものは、パフォーマンスよりバカバカしく、でも生々しいと思った。

 キャストが面白い。フィリップ・シーモア・ホフマン、フランシス・マクドーマンドはもちろんなのだが、主人公ウィリアム役は『ゴーン・ガール』で女性の刑事と捜査をしていた巡査役も演じていたパトリック・フュジット。ペニー役は今作で注目されたケイト・ハドソン。あとはペニーの友人役に『ピアノ・レッスン』のアンナ・パキン、ウィリアムの姉アニタ役にズーイー・デシャネル(相変わらず綺麗でかわいい!)、後半に登場したマネージャー役に今やすっかりTV番組の人気司会者ジミー・ファロン(ジミー、眼鏡とヒゲで大分胡散臭いよ(笑))…と観ていて面白かった。演技でいうなら、やはりケイト・ハドソンか。謎が多いけれど、明るくて、大人びているけど子どもっぽい、そんな少女が大人の女性になる頃特有の魅力をあの笑顔で演じていた。

ただ今回、2時間30分超えの特別編集版のほうを観てしまったので、少し冗長な気がしてしまった。もしかしたら120分ほどで収まっているバージョンはすっきりしていて観やすいのかもしれない。あとは音楽と笑いに身を委ねて、気軽に観ることをお薦めしたい。この頃のロック音楽を知っている方はより楽しめるだろう。