亘

あの頃ペニー・レインとの亘のレビュー・感想・評価

あの頃ペニー・レインと(2000年製作の映画)
4.2
1969年カリフォルニア。11歳のウィリアムは2学年飛び級した学校に馴染めずにいた。一方姉アニタは厳格な母を嫌い家出。弟に大量のレコードを残した。4年後ロック記者となった彼は取材の中で謎の女性ペニー・レインに出会う。

厳格な家庭で育ったウィリアムがロックという異世界に浸かった数ヶ月を描く作品。ウィリアムは"イケテる"男になりたいけど、どうしても真面目なイケてないやつを抜けきれずもどかしい。でも、ウィリアムだけじゃなくて今作の誰もが理想を追い求め、皆が現実との違いに悩みボロボロになってしまう。

ペニー・レインは、明るくてかわいいけどミステリアスな女性。不器用で"イケてない"ウィリアムにとってはこれが初恋だったんだろう。女性に不馴れで上手く関係を前に進めることができない。一方彼女は明るい性格でギタリストのラッセルと付き合うし友達ともワイワイ楽しむし"イケテる"人。ウィリアムにとって彼女は近くて遠い存在なのだ。

そんな彼女も理想を追い求めたけど、結局現実との差に悩み事件を起こす。ウィリアムがついていったロックバンド・スティルウォーターも同じ。みんな理想を追い求めた結果ボロボロになる。ウィリアムの理想の"イケテる"人たちだったのにその理想も完璧ではないのだ。記者として順風満帆に思えたウィリアムにもついに"現実"が訪れ彼の冒険は終わる。

現実に戻ることになり、ウィリアムは厳格な母の元に戻ることになってしまったし、「俺たちはイケてない」という先輩記者のレスターの言葉に彼はがっかりしたに違いない。でも怒らずに帰還を喜ぶ母や「いい男は薄っぺらい」「俺たちの方が賢い」というレスターの言葉とか彼は現実の良い面に直面する。

理想を追い求めた仲間は結局バラバラになったけど、現実に希望を見いだし歩み始めた、ラストシーンにはそんな爽やかさがあった。

印象に残ったシーン:ペニー・レインと出会うシーン。皆でバスで移動するシーン。ウィリアムがペニーを救うシーン。飛行機で皆が本音をいうシーン。ウィリアムとアニタが再会するシーン。2人が帰宅するシーン。ウィリアムとラッセルが再会するシーン。

印象に残ったセリフ:「俺たちはイケてない」「俺たちの方が賢い」「自分の人生を生きているのね」

余談
原題"Almost Famous"は直訳すると"ほぼ有名"つまり「ブレイク寸前」という意味でスティルウォーターのツアー名にもなってます。
今作は監督の経験に基づいています。監督自身15歳で『ローリング・ストーン』誌の記者になったそうです。
亘