成金のようでもありヤクザのようでもあり浮浪者のようでもある男・ゴキブリ(勝新太郎)は、スラムの守り神のような存在だ。
乱暴者で下品なゴキブリだが、実は近所の孤児院の清純な先生(藤田弓子)に片思いしている。
お金ができると孤児院の子供達にプレゼントを持っていくという伊達直人ぶりの直情さ。
が、一方では娼婦の三枝(牧れい)とやりまくっているという、純愛と性欲が別離したキャラクターだ。
ゴキブリはある日かつての旧友・関口と出会うが、実は彼こそがスラム潰しの張本人なのだ。
この作品では、全編通してインテリ関口と野獣ゴキブリの戦いが描かれる。
だが、帝王のはずのゴキブリは、苛められっ子だったはずの関口に最初から最後まで負け通しになる。
こんなに負けまくる勝新も中々珍しい。
面白くはないが、70年代に入り、60年代に演じてきた無敵の超人から脱却しようとする勝新の苦しい戦いを観ることができる。