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夕陽のガンマンのrollinのネタバレレビュー・内容・結末

夕陽のガンマン(1965年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

“やって来た凄まじい早射ちの男!
荒野に落ちる陽をあびて、孤独なガンが火を吹いた!!”


荒野を見渡す視線。
馬のいななき。監督自身の口笛。
燐寸に火がつき、レバーアクションのチャキッという音が鳴ると、荒野を行く男は乾いた銃声とともに地面にひれ伏した‥‥
♪〜( ´Ɛ`)
映画音楽史を変えた名テーマとともに、バウンティ・キラーは煙状のクレジットを撃ち抜いていく。(LEE VAN CLEEFのVANのとこ撃ち抜くのほんと好き笑)
フェンダーのエレキまで取り入れたサウンドは、本作の立ち位置とハリウッド市場への殴り込みをここに宣言するのだ!!


おなじみの汽車の音。
元祖ヴァルチャーことリー・V・クリーフが熟読しているのは、「マカロニ・ウエスタン銃器熱中講座」。漆黒のフロックコートと破幻の瞳(GUN光)。

——— トゥカムケアリ
映画冒頭は、彼の顔パスの限界を探る内容。
酒場のマスターのサブテキストのお手本のような台詞回しや、『ミッドナイトラン』に影響を与えたであろう手配犯キャラウェイの追走。そして料理人の包丁袋の如き長竿見本市のご開帳!(ビョ〜ン♪)
GUNマニア・レオーネ監督のフェティシズムと、膝が悪かったリー・V・クリーフを考慮して生み出されたマカロニ屈指のキャラクター、それが遠距離技巧型の拳銃使いモーティマー大佐だ!(スタンド名: バントライン・スペシャル)。

——— ホワイトロックス
カメラに背を向けて歩く男のベルトに挿さったコルトのガラガラヘビのインレイ(本体は純正にグレードアップ)。
我々はこの男を知っている!
完全アウトなイーストウッド演じる役名モンコ(片腕)の発音。チョップのしすぎで着けざるを得なくなった右手のリスト。
カンティーナの賑わいと、通りを濡らす雨は、伊・西・独合作による潤沢な予算を感じさせ、それに相反するかのように効果音は乾いている。ナイスチョップ!
鏡越しに髭剃り途中の対手の姿を確認し、振り向きざまに3発‥4発。(そして画面越しに5発目)。実に簡潔且つ洗練された撃ち合いの完成形。

狂犬インディオの手配書を銃床で打ち付ける保安官(最高)。1万ドルの賞金額とジャン・マリア・ヴォロンテの満面の笑みが物語る危険性。銃声SEで切り替わるモーティマー大佐の顔面と手配書とのカットバック‥天才か。『荒野の用心棒』では終盤まで温存していた眼光大写しを、本作では出し惜しみなくガンガン使う!

インディオが裏切り者を処すシーンでは、この映画がいかに役者の眼光をGUN光として扱っているかがよく分かります。
オルゴールの音色が終わる前に、ヴォロンテのGUN光によって男は仕留められている。もっと言うとモリコーネ先生によるインディオのテーマの印象的なバッハのオルガンによって、彼の運命は既に決定しているのでがんす。
音楽が後付けだった『荒野の用心棒』からすると、実に感慨深い進化。
教会跡を根城にし、女子供にも容赦なし。映画内で初めてマリファナを吸ってみせたインディオ/ヴォロンテは、革新的な悪役。それにしてもクラウス・キンスキーの存在感がハンパない。

——— エルパソ
カルロ・シーミによる汚しの美学。
モンコを宿へ案内する子役のませた演技、特に振り向き方が抜群。宿の豊満なメアリおばちゃんや気弱な主人ら市井の人々もバラエティ豊か。

インディオと使徒たち。
鐘と拍車を撃って回転させる粋な演出。モーティマー大佐とロコ、もといワイルドの邂逅。キンスキーの痙攣のような瞬きと頬の震え。モーティマー大佐はその男の本性をまだ知らない。
望遠鏡を使ったGUN光の決斗の遠距離戦。棺桶爺のペリコロことヨセフ・エッガーの登場。レオーネ監督はかわいいジイちゃんで笑いを取るのが大好きやな(๑˃̵ᴗ˂̵)

夜のエルパソは見事な照明。
で、でたっ!新しい靴買ったら踏んでくる奴!!アーティラリーとバントラインの射程距離の違い。子どもみたいに意地っ張りな猛者同士の探り合い。男たちは分かり合ったのだ!(ビョ〜ン♪)

インディオ一味の金庫を奪う手際の良さ。アグアカリエンテで再会する大佐とワイルド(キンスキー)。ワイルド!そいつデリンジャー隠してるぞ!!‥‥それにしても皆ほんまにおしゃれ( ´ ▽ ` )タマラン!
インディオを出し抜こうとした大佐とモンコをリンチするシーンの照明も素晴らしい。炎の赤と夜の青。日干しレンガの白いキャンバスだからこそ映える対比。情緒不安定なインディオの狂った笑い声。ただその二人をどんなに殴っても、翌日には傷はなくなってると思うよ!

晴天の下で繰り広げられるインディオ一味との最後の死斗。無音の中に鳴り響く豪快な銃声。白い建物と青空の美しい景色とは裏腹に、インディオの神経は衰弱していく。彼は待っている。陽が傾くのを。何故ならこの映画のタイトルが夕陽のガンマンだからだ!!

ローマ人ならではの円形闘技場という決斗舞台のチョイス。
インディオのフラッシュバックの象徴だったオルゴールの音色は、ここへ来て壮大なテンションのトランペットに飲み込まれる。そしてモーティマー大佐のテーマへと劇的な変化を遂げるのだった!
モリコーネ先生の音楽は映像による説明よりも数手先から物語を牽引し、友人に全幅の信頼を置いた監督は、奥義“極限大写し”を完璧に会得する。

ヴォルカニック・ライフル片手に決斗のジャッジをつとめたモンコが、最後にちゃんと振り向き撃ち(だるまさんが転んだ撃ち)をするのもたまらん。賞金額で人数を勘定するキャラの徹底ぶりも見事!
これが完全なる自立を果たしたマカロニウエスタン最高傑作のひとつ、正真正銘の『続・荒野の用心棒』だ!!!


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QUALCHE
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