ジェイコブ

大脱獄のジェイコブのレビュー・感想・評価

大脱獄(1975年製作の映画)
3.6
信頼していた男剛田から殺人の罪を着せられ、死刑囚となってしまった梢一郎。網走刑務所に収容されるが、同じ死刑囚の脱獄計画に加わり、見事脱獄に成功する。梢は自分をハメた連中への復讐を胸に、極寒の中札幌までたどり着くが、そこで自分の家族が殺された事を聞かされる……。
巨匠石井輝男監督のアクション。高倉健と菅原文太のコンビという、今考えてもかなりレアなキャスティングも注目すべき点の一つ。特に雪の中殴り合う二人なんて、この映画でしか見れないだろう笑。善良であったはずの梢が、復讐心に駆られて超えてはならない一線を容易く超えてしまう。……いや、アンタ簡単に殺し過ぎではないか、もっと葛藤しないのかと突っ込みたくなるが、後半はそんなの気にならなくなる程の緊迫感で、非常に見応えがある。
剛田演じる田中邦衛の北の国からのイメージを根底から覆すかのようなクズっぷり、国岩演じる菅原文太の、銭ゲバだが憎めない男が魅力的。国岩のバックボーンがまた悲しい。彼も社会の犠牲者の一人であり、好きで殺人者になったわけではなかった。そんな国岩の抱える心の闇を、菅原文太が見事に引き出している。
部分部分で下品な場面もあるが、石井輝男の入口として考えれば、まだ見やすい作品であると思う。