るるびっち

魔像のるるびっちのレビュー・感想・評価

魔像(1952年製作の映画)
3.5
今だとホラーにも見える。
襲われる側から見れば、正に不気味なホラーであろう。
権力を傘に主人公をいじめた男たちが、ブチギレた主人公に次々と殺戮されていく。
忍耐に忍耐を重ねていた主人公がブチギレた瞬間、人格が変わったようにふてぶてしく笑う。
そこから彼は魔太郎になる。「ウラミハラサデオクベキカ」
厳重に警備しているのに、涼しい顔でいつの間にか床の間に鎮座している。慌てることも、表情を変えることもなくすましている。
幾ら用心棒を抱えて用心しても、すまして座っている。
幽鬼のように神出鬼没。
既に死んで、魂が復讐しているのか。
斬りかかると、次々なぎ倒す。
「一番首、二番首、三番首と十七の首だ」と笑う。
あと、何故か早口言葉を言いながら斬るのも不気味だ。
いやコワー。

正和パパの阪東妻三郎は、二役を演じている。
一人は不気味な武士。もう一人は、そっくりさんの喧嘩渡世の浪人。
寡黙な主人公と対照的で、庶民的な暴れん坊。
この時代の主人公は、寡黙で喋らないので何を考えているか分からない。
脇役が彼の考えや狙いを説明するのだが、本作では主人公と脇役両方に扮している。つまり自分の考えを、別の自分が説明するのだ。
「よくやりなすった、よくまぁ、思い切ってやりなすった」
それ、自分で自分に言ってるだけやがな‼
自分で自分を褒めてますよ!

演じ方も重厚・寡黙と、喧嘩早い江戸っ子気質。
喋り方も殺陣も変えている。対比的な二人のバンツマ。
考えると、息子の田村正和は演じ分けとか出来るのかな?
何をやっても田村正和にしかならないと思うが・・・
しかしニヒルで寡黙な二枚目と、意地悪でお喋りな古畑は出来るか。
自分そっくりな犯人との対決って、やってないな。
犯人と二役で、「喋らない犯人」と「お喋りな古畑」を演じ分けて欲しい。
見たいな〜。
もう永遠にその話は作れない。
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