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泥棒成金のtjZeroのレビュー・感想・評価

泥棒成金(1954年製作の映画)
3.8
南仏リヴィエラ。セミ・リタイヤ中の怪盗ジョン・ロビー(ケーリー・グラント)は、かつての自分の手口そっくりの宝石泥棒のおかげで、周囲から疑いの目を向けられる。
潔白を証明するため、警察よりも先に真犯人を捕まえようとするロビーだったが…。

ブランド品、ってなんなんでしょうね?
おそらく原価は数百円くらいの代物が、ロゴやイニシャルを付けるだけで、数万、数十万でバンバン売れる。

ただ一方、偽物に比べると、作りは確かだし、質感や存在感も否定できない。
持ってる人の格やランクが上がって見えたりもする(錯覚かもしれないけど)。

本作でヒロインを演じてるグレース・ケリーっていう女優さんも、”ブランド品”みたいな存在だと思うのです。
眼はふたつ、耳もふたつ、鼻と口はひとつずつ、骨の数もたぶん我々と一緒。骨格だって(それほど)違わない、はず。
なのにすべてのパーツが合わさると、まるで別物。同じ種族(人類)とは思えない美しき完成度。
彼女が出ているだけで、映画自体の格すらアップしてしまう気がします。

本作は、そんな極上のヒロインを、アルフレッド・ヒッチコック監督が最上級に美しく撮ってくれています。
ヒッチ作品は、①犯罪のスリル、と、②恋愛のドキドキ、が掛け合わされて観客を魅了します。
本作の場合、ケリーの”ブランド力”が強力なため、②の要素が濃く、他のヒッチ作よりはテンポがゆったりで、たおやかなムードなんですが、それが南仏のリゾート地のゴージャスな雰囲気とマッチしていてほろ酔い気分で観ていられます。

劇中でケリー演じる令嬢フランシーが、怪盗ロビーに対して「(私を)盗めるかしら?」と自分をダイヤモンドにたとえて誘惑するシーンがあるのですが、観客の大半もロビーと同じく「は~参りました」と白旗を挙げてしまうこと必至なのであります。
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