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非情の罠のエディのレビュー・感想・評価

非情の罠(1955年製作の映画)
3.2
なかなか頂点に上り詰められないうらぶれたボクサーがアパート向かいの女を助けたことで女の愛人のギャング組織から狙われるドキュメンタリータッチの映画。キューブリックの処女作だが、傑出したものは感じない。

主人公デイヴィーはベテランの域に差し掛かっているボクサーだが、顎の弱さなどからなかなかチャンピオンになれず、若いボクサー相手に負けたばかり。落ち込んだデイヴィーはボクサーを辞めて田舎で叔父の経営する農場に帰ろうとするが、そんな折、アパート窓から向かいの部屋で女が襲われているのを見つけ救いにいった。その女はグロリアと言い、ラパロという名のギャングの情婦だったが、そんな関係からに逃れようとしていたのだ。たった数日過ごすうちにデイヴィーとグロリアは互いに惹かれ、一緒に田舎に帰ろうと未払い給料を取りに行った所、情婦を奪われた怒りに燃えるギャングから狙われてしまう。。。

この映画はキューブリックが演出から音楽まで何でもやっているのだが、カメラワークやシーン切り替えがイマイチに思える。特に、前半、デイヴィーとグロリアを交互に紹介するところは、何で知らない人が突如画面に出てくるのか?とおもうくらいなので、拙い印象を受けた。下から煽るように撮影したボクシングの試合はなかなか迫力があるが、キューブリックらしさを感じることはできない。

ラパロとデイヴィーの最後の戦いの場であるマネキン工場のシーンはなかなか迫力があるが、プロのボクサーの割りにラパロとの戦い方が近くに落ちているモノを投げたりするだけで素人のおっさんのようにしょぼいので、ボクサーというせっかくの設定を全く活かしていないと思う。

後半はフィルムノワールらしい緊張感はあるけど、前半はまだるっこしく感じたので、全体的に未熟な印象を持った。

駄作というほどではないけど、わざわざモノクロの作品を観るほどの傑作ではない。
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