3月7日はスタンリー・キューブリック監督の命日。
今日でちょうど没後19年を迎えます。
本作『Killer's Kiss』は彼にとっての長編映画2作目に当たり、
次回作『The Killing』の原点となる初期フィルムノワール作品。
主人公のボクサーを中心に、彼の向かいの部屋に住む美女グロリア、彼女との痴情のもつれで憤怒する嫉妬深いギャングのボスが「愛と犯罪」の三つ巴ドラマを展開させます。
元々写真家であったキューブリックはここでその才能を遺憾無く発揮しており、
奇抜なカメラアングルや拘り抜いたショット、カット割り、カメラワーク、編集技巧など、既に洗練された視覚文法の構築には余念がありません。
迫力と臨場感に満ちたボクシングの試合は特に圧巻!
ほぼ同年に製作された日本映画『太陽の季節』なんかとは雲泥の差です。
またフォトジェニックなマネキン工場で展開される格闘も、キューブリックの映像作家としての矜持が光るシーン。
彼のアイディアが詰まったスクリプトは大変よく書けている力作ですが、
いざ映像化すると粗削りなシークエンスと初々しさの残る演出が目立つのも微笑ましい点であります。