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リトアニアへの旅の追憶のSのレビュー・感想・評価

リトアニアへの旅の追憶(1972年製作の映画)
4.2
2022/09/04
あいち芸術文化センター開館30周年記念
国際芸術祭「あいち2022」連携規格事業
第26回アートフィルム・フェスティバル
16ミリフィルム・日本語字幕版上映

1949年、故郷からナチスに追われアメリカに亡命したジョナス・メカス監督の代表作。

▪️30年前となる愛知芸術文化センター開館特集では、実験映画作家の出水真子や、小津安二郎監督らの家族を主題とする作品と共に、本作『リトアニアへの旅の追憶』は、アートフィルム・フェスティバルを含め過去に10回位は上映をしてきた。
メカスが日本語字幕の貼付に関して、16ミリの画面に対して字幕の面積が大きすぎるため許可をせず、メカス本人のコメンタリーとプリントを添えて上映を行ってきた。
10年前位に、一般の劇場公開時に35ミリに字幕を入れて上映された。今回その35ミリのフィルム状態が良くないことから、16ミリの日本語字幕上映を初めて行った。

▪️本作は3章から成り立っている。
第1章:言葉も通じないニューヨーク・ブルックリンで16ミリフィルムを手に日々の暮らしを日記のように撮り始める。
第2章:戦争によって一度は故郷を離れたメカスと彼の弟・アドルファスが27年ぶりにリトアニアの故郷を訪問し、母親、兄妹や友人との再会する様子や風景を映し出す。
第3章:メカス監督が一時収容されていた強制収容所のあったエストニアのエルンストホルンへ訪問した際の様子などが収められている。

瑞々しい映像と言葉で一つの作品にまとめ上げ、美しいピアノ伴奏と共に感動的な映像叙事詩となっている。年老いた母親を映し出す時、自身の故郷の田舎風景や家族の思い出と重なり、言い表せない郷愁の想いに涙した。

なだらかな画面の連続性を遮るように、シークエンスに1から順に番号が唐突に画面に映し出される。16ミリのフィルムの質感と映像編集の独特の粗めかしさが特徴的で、感動的なシークエンスがある程度続き、情緒性を持たせ過ぎないように、淡々としたモノローグに切り替わる。

メカスの代表作にして、アメリカン・インディペンデント映画の普及の名作と呼ばれる。
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