カラン

リトアニアへの旅の追憶のカランのレビュー・感想・評価

リトアニアへの旅の追憶(1972年製作の映画)
4.0
エモエモの心優しき草食系ビートジェネレーションっていう印象を受けるかもしれないが、biographyを見るとなかなかハッスルする人のよう。ジュネ、って『エイリアン4』のほうじゃなくて、『泥棒日記』書いたほうね、の映画(愛の歌という映画)を公開して、猥褻罪で逮捕されて、公権力の検閲と戦うキャンペーンを展開したりもしたらしい。こういう人いいよね。自作は静かだけど、情勢にコミットする人ね。

観る前は、うるうる感傷旅行日記代わりに、映像を繋いだたけなのかも、とか疑ってた。反省。

失われた故郷を求めて100の瞬きが炸裂する。映像がまばたいて、光が飛び散り、時間軸は脱臼、運動はギクシャクした早回しで、曇り空とママの花柄のスカートと金色の干し草が、一つ一つ輝きながら、混ぜこぜになる。長回しは挿入的に使うだけで、だいたい切断しちゃうからね、刹那的な煌めきを対象がまとうことになる。物や人の本来不可視の輝きが、画面に溢れている。

先のことは分からない。「僕」は故郷への旅路を続ける。「僕」が故郷を離れたのは戦争があったから。人々は戦争があったということを忘れたのか、知らないようだ。皆んなに戦争があったんだよと叫びたい。

雨の空港で「僕」は若いスチュワーデスの足に見とれていた。女の足に見とれる人間に結婚は早いらしい・・・が、「僕」は、この映画の公開から2年後、結婚した。先のことは分からない。僕は旅を続ける・・・
カラン

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