kojikoji

秋刀魚の味のkojikojiのレビュー・感想・評価

秋刀魚の味(1962年製作の映画)
4.0
1962年 日本 監督小津安二郎
キャスト:笠智衆、岩下志麻

 このところ皆さんのレビューに時々小津作品が取り上げられている。久しぶりに観てみるかと思っていた。
 そしてとっておきの小津遺作「秋刀魚の味」を観た。

 妻に先立たれた初老の父親(笠智衆)は友人の話や、久しぶりに会った恩師の現在の姿を見て、婚期を迎えた娘(岩下志麻)を嫁がせることを決める。しかしいざ娘が嫁いでいくとその「老い」と「孤独」が彼を襲う。

 小津の映画は年を取ればまた違った味わいがあると前から聞いていたが、30年ぶりに観る小津は確かに違った味がした。
 
 この映画をたのしませてくれる友人3人の会食と会話の味。羨ましい友人、理想的な姿だ。
 それから、長男夫婦のゴルフ道具をめぐるかけあいの面白さ。うちもやったなぁー、ほとんど同じ会話。笑った。
 そして、もちろん、娘が嫁いだ夜の父の寂しさ。
 花嫁が去った後の誰もいない鏡台が寂しい。
「娘をやった夜は寂しいもんだよ。」
「あっけないもんだよ。」

 その夜、父は一人スナックでウイスキーを飲む。
お葬式ですかときくママに
「そんなもんだよ」と答える。
 そして軍艦マーチが流れた時の笠智衆の寂しい顔が悲しい。小津はその後、その後ろ姿を撮っているがそのカットがまた悲しい。笠智衆の味わい。

「秋刀魚の味」一捻りも二捻りもした題名だと思っていたが、実は娘が嫁いだ夜こそがストレートに父が味わう「秋刀魚の味」なのだと、勝手に思った。

「ひとりぼっちか」笠智衆がつぶやく。

 傑作。

#2022ー79
死ぬまでに観たい映画マイベスト1000ー17
kojikoji

kojikoji