ちくわ

秋刀魚の味のちくわのレビュー・感想・評価

秋刀魚の味(1962年製作の映画)
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デジタルリマスター版試聴。小津作品まさかのNetflix進出。

傍目からみれば幸せそうに見える中流家庭、それを取り巻く人々にピントを合わせ、
隠された憂いや慕情などを刹那的に捉え、歳を重ね変化する時代や関係性を描いている。

家族、同僚、同級生、夫婦。
互いの思いの交差のなかで揺れ動く感情、その表象のどれもが
からかい、作り笑顔、仕草、影、去りゆく後ろ姿など
シンプルかつ演出のレベルの高さを窺わせるもので、日本のハイコンテクスト文化の美しさを表してるかのよう。

ひょうたんと教え子たちの関係性の描かれ方が居た堪れないが、それでも何気に温かみも感じる、
でもだんだん笑えなくなるほど哀しくなってくる主人公と同級生の気持ちが伝わってきて本当いたたまれない。それが逆に笑えてきちゃうんだよな。
でも中華そば屋をあんなディスるような描き方しなくても、とは思う(笑)

岩下志麻と岡田茉莉子が綺麗すぎて。
杉村春子のキャラと比較するとあまりに対照的で、なかなか強烈。。笑
そう、小津作品っておとなしそうに見えて実はけっこう辛辣で毒気があるのが醍醐味で、面白いんだよな。

ラストシーンはもちろんだけど、その前にある
娘の結婚式のあと寂しさを紛らわすためバーに妻の面影を求め赴くシーンも、悲しさと可笑しさを秘めた秀逸なシーンだった。

普遍的名作です。
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